日本全体の少子高齢化の波は、労働力人口や、正社員・正規職員人口の年代別バランスも変化させている。企業では若手を自由に採用・配置できなくなっているが、若手の採用難よりも重要なのは、若年労働力人口自体の減少。現在の10歳代の人口の薄さを考えれば、この問題は今後、より深刻化するだろう。このような状況で、企業が持続可能性を高めていくためには、ボリュームゾーンのミドルシニアを十分、活用するための投資が必要ではないだろうか。ニッセイ基礎研究所の坊美生子氏が解説する。
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1―はじめに
新卒採用が学生の「売り手市場」と言われるようになって10年近い。厚生労働省と文部科学省の調査によると、今年3月に卒業した大学生の就職率は98.1%(4月1日時点)で、過去最高を更新した。就職率は、新型コロナウイルスの影響を受けた2~3年前はやや低下したが、長期的にみれば、2015年卒以降、90 %台後半の高水準で推移している(図表1)。
そのような中、各企業は、インターンや内定者向け行事を実施するなど、積極的な採用活動をしているが、仮に今年や来年、採用目標を達成できたとしても、今後も達成し続けられるかどうかは分からない。周知のように、国内では、少子化が長く続いてきたことによって、若年層の労働力人口そのものが減少しているからである。だからと言って、外国人材の採用も、そう簡単ではない。
従って、社会全体の持続可能性を維持するためには、労働力の人口ピラミッドの変化に合わせて、中高年の年代層までが、フルに能力を発揮できるような環境を目指さなければならないだろう。各企業単位で見れば、社員の年代別構成比の変化に合わせて、各年代層の役割や活用方法を見直していかなければならないのではないだろうか。本稿では改めて、このような年代別構成比の変化と、各年代層を活用する重要性について、政府統計を用いて説明する。