(※写真はイメージです/PIXTA)

もうじき4月。進学に就職にと、新しいスタートに胸を膨らませている人も多いだろう。この春は、大手企業の大幅な初任給引き上げ等がしきりに報道されたが、大手企業に限らず、有能な人材の育成と定着のため、給与体系や勤務形態の改善に着手する企業は増えている。しかし、そんな企業の「手厚いケア」から漏れてしまっている世代も…。実情を見ていく。

景気回復も、恩恵にあずかりにくい中高年層

もうじき4月となり、新年度がスタートする。この春は「初任給引き上げ」のニュースでにぎわったとおり、コロナ禍を乗切り、若年世代の従業員に気前の良さを見せる企業は多い。しかしその一方、40代~50代の従業員はそのお相伴にあずかれない模様だ。

 

企業として、会社の将来を担う若手を優遇するのはある意味当然であり、会社のお荷物となりがちな中高年層は、定年まで穏便に過ごせるよう、ひたすら息をひそめているほかない。

 

40代~50代前半は、いわゆる就職氷河期世代。企業が採用を絞り込んだ1990~2000年代に大学卒業時期が重なったという不運な世代であり、なかには非正規としての就労を繰り返し、いまなおその立場から脱出できない人も少なくない。

 

2000年代後半、雇用環境がよくなったわずかの期間、なんとか正社員となった人たちもいたが、その後ふたたびリーマンショックで状況が悪化。以降、2010年代中盤から雇用環境が改善するも、最初の氷河期世代はすでに、40代も後半となっていた。

 

企業からスルーされたキャリアのないアラフィフたちは、現在も厳しい状況のままだ。

50代の非正規就労者、年金額は11万円強程度か

厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、大卒男性・非正規社員の給与(所定内給与額)の中央値は24.5万円だ。50代前半では22万3000円、手取りで17万円程度。60歳まで現在と同じ給与水準だったと仮定したうえで、厚生年金に加入していた場合、65歳から手にする年金額は月11万6000円程度になる。

 

【年金の支給額】

 

国民年金は…

年金額×(保険料の納付月数÷480ヵ月)

 

厚生年金は…

★加入期間 2003年3月まで

①「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」

★加入期間 2003年4月以降

②「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」

 

※便宜上、②だけで計算した場合。厚生年金は月5.2万円程度、国民年金は満額支給で現在の受給額でとすると、月11万6000円程度となる。

 

2020年10月から非正規(短時間労働者)に対する厚生年金保険の適用の拡大されたが、その前は非正規が厚生年金に加入できないケースも多かった。そのため、上述の年金受給額月11万円を下回る人たちも相当数いると想定される。

厚生年金と国民年金の平均受給額

では、現状の年金受給者の状況はどうか。

 

厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、2021年の厚生年金受給者の平均年金受給額は、老齢厚生年金が月額14万5,665円、国民年金受給者の平均年金受給額は老齢年金(加入25年以上)で月額5万6,479円だった。

 

2021年度の年金受給額を年齢別にみると、厚生年金、国民年金のいずれも、65歳以前を境に平均受取額が増額。これは繰り上げ受給の影響だといえる。また厚生年金は、70代は平均14万円台、80代前半は平均15万円台、80代後半以降は平均16万円台と、平均受取額は上昇傾向。こちらは法改正の影響によるものと想定される。

 

年齢別「年金受給額」

 

◆厚生年金

60歳:87,233円

65歳:145,372円

70歳:141,026円

75歳:145,127円

80歳:154,133円

85歳:161,095円

90歳以上:160,460円


◆国民年金

60歳:38,945円

65歳:58,078円

70歳:57,405円

75歳:56,643円

80歳:55,483円

85歳:56,404円

90歳以上:51,382円


出所:『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』(厚生労働省)

 

厚生年金の受取額の分布において、年金月20万円以上は全体の15%と、6~7人に1人の割合で、年金15万円以下は全体の54%程度、月10万円に満たないのは全体の23%でほぼ4人に1人、月5万円未満は2.5%と、50人に1人となっている。

就職氷河期世代の「不安しかない未来」

好景気の時代、多くが正社員で就労してきた高齢者の現状が上記であるなら、就職氷河期で割りを食った彼らの老後はどうなるのだろうか。

 

収入面の懸念、そしてそれが原因となる不本意な「おひとり様」状態、そこからの孤独な老後と貧困。

 

もし就職氷河期世代・非正規の立場にある人たちが「成り行きに任せ」で今後を過ごしてしまうと、見えてくるのはこのようなツラすぎる老後生活だ。

 

「この状況、不安しかありません」

 

と、ある就職氷河期世代の男性はポツリ。

 

将来起こりうる、このようなリスクを回避すべく、今からでも対策を練ることが不可欠だ。また、国も企業も「自己責任」として突き放すことなく、速やかにこの問題の解決に着手し、日本に暮らす人たちの老後不安を軽減するべく、動く必要があるといえる。

 

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