年収1,600万円・59歳エリート部長…定年直前、タワマン高層階で気づいた“老後破産”の未来に「俺の人生、なんだったんだ」【CFPの助言】

年収1,600万円・59歳エリート部長…定年直前、タワマン高層階で気づいた“老後破産”の未来に「俺の人生、なんだったんだ」【CFPの助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

上場企業で営業部長を務めるT氏。若いころから派手な暮らしを好み、住まいはタワマン高層階、誰もが羨む生活を送っていました。しかし、59歳の定年間近になって、T氏は自室のリビングで「ねんきん定期便」を見て愕然とします。退職金をもらったわずか2年後に「家計破綻」が迫っていたのです……。はたして、T氏に打つ手はあるのでしょうか。牧野FP事務所の代表社員である牧野寿和CFPの助言をみていきます。

T氏の家計は破綻寸前…CFPが行った「5つの助言」

筆者はT氏から話を聞き、CFPとして以下の5つの助言を行いました。

 

1.ライフシミュレーション(人生設計)はターニングポイントごとに見直す
2.年金の受給額には限度がある
3.身の丈にあった生活をする 
4.借入金での心配事は躊躇なく借入先の金融機関に相談する
5.年齢や自分の気持ちに正直な生活をする

 

それぞれ、詳しくみていきましょう。

 

1.ライフプラン(人生設計)はターニングポイントごとに見直す

家計の収入・支出や貯蓄額は、就職や結婚、子どもの誕生、住宅購入、退職、相続など、人生の節目ごとに見直すべきものです。

 

しかし、T氏は長いあいだ、住宅購入時にハウスメーカーでしてもらったシミュレーション結果を信じ込んでいました。

 

そのため、子どもが誕生し、妻が働くのをやめ、家計の支出が変化しても、T氏の給与が順調に増えていたこともあってか、ターニングポイントごとに見直すことはありませんでした。T氏は常々会社の内外で、「60歳の定年で完全リタイアする」と公言していたのです。

 

ところが、このままでは60歳以降も働かなければ62歳で退職金を使い果たし、住宅ローンの残債を約2,309万円も残して家計破綻する未来が迫っています。

 

2.年金の受給額には限度がある

公的年金のうち「老齢基礎年金」の受給額は、20歳から60歳までの40年間滞りなく国民年金保険料を納付していれば、77万7,800円(令和4年度)です。納付していない月があれば、ここから減額されます。

 

また、「老齢厚生年金」は、厚生年金保険料を納めた人が、老齢基礎年金といっしょに受給できます。老齢厚生年金の受給額は「報酬比例年金額+経過的加算額+加給年金額」の計算式で算出できます。

 

詳しい計算方法は省略しますが、報酬月額(ここでは“毎月の給与”と読み替えてよい)を保険料額表の1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までの32等級に分け、その等級に該当する「標準報酬月額」によって、受給額を算出します。

※ 日本年金機構HP「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和4年度版)保険料額表」
 

したがって、T氏のように100万円以上月収があっても、標準報酬月額の上限は32等級の65万円で計算されるため、思うほど年金がもらえないことがわかります。

 

3.身の丈にあった生活をする

T夫婦のように見栄を張った生活を続けても、高揚するのはそのときの自分たちだけで、周りがなにか評価をしてくれるわけではありません。また、いずれ家計の行き詰まりが懸念されます。

 

収入と支出、そして将来の支出に備え、貯蓄をしながら地に足をつけた生活をするのが一番です。

 

4.借入金の心配事は、躊躇なく借入先の金融機関に相談する

心配事を金融機関に相談するというのは、見栄っ張りのT氏にとっては屈辱的なことかもしれません。しかし手遅れになる前に、現在のT氏がもっともすべき行動です。銀行に現状を話して、善後策を検討してもらいましょう。

 

なお、T氏に、子どもの大学受験の時期を考慮したい気持ちや、「任意売却して住宅ローンを完済し、手元に残った資金でどこかに住みたい」といった意向があれば、それも相談時に話すといいでしょう。

 

5.年齢や自分の気持ちに正直な生活をする

T氏がある夜、ぼそっと「会社勤めに疲れた」と妻にこぼすと、妻も「実は近所に隠れてパートに行ったり、無理してお金持ちと付き合うのには疲れた」と話したそうです。

 

人生100年とはいわずとも、T夫婦は人生の折り返し点を過ぎたばかりです。夫婦間でも話し合いながら、決して派手ではないかもしれませんが、いまの2人に合った生活ができることが幸せな老後の秘訣でしょう。

 

 

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

 

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