小4の息子、唐突に質問「銀行って、なんの役に立ってるの?」パパ、思わず沈黙…子どもにもわかる〈たとえ話〉で解説

小4の息子、唐突に質問「銀行って、なんの役に立ってるの?」パパ、思わず沈黙…子どもにもわかる〈たとえ話〉で解説
(※写真はイメージです/PIXTA)

大人にとっての「常識」「当たり前」も、子ども目線では疑問がいっぱい…。唐突な質問を受け、面食らうこともあるでしょう。なかでも銀行は、いかにも重要な存在でありながら、一見して業務の内容がわかりにくく、子どもは不思議に思うことが多いようです。元メガバンカーの経済評論家、塚崎公義氏が解説します。

「貸し手→借り手」の資金移動をスムーズにする

銀行が世の中の役に立っているか否かを考えるためには、銀行がないと何が困るのか、を考えればいいわけです。工場を建てたい企業が金を借りたがっているとして、何が起きるのか考えてみましょう。

 

筆者を含む、大人である私たちは老後のために若干の蓄えを持っていますが、工場建設資金を貸すことはないでしょう。したがって、工場が建たず、日本経済が発展しないのです。

 

そもそも、だれがお金を借りたがっているのかを知ることは容易ではありません。知ったとしても、不慣れな私たちが企業相手に契約書を取り交わすのは大変ですし、資金のやりとりも面倒です。

 

もっとも、インターネットに「お金を借りたがっている企業の一覧表」というサイトができたなら実現可能かもしれませんが、大いに面倒であることは疑いありません。

 

さらに大きな問題は、その企業が倒産しそうか否かを判断することが私たちには難しい、ということです。大勢の慣れない人々が苦労して借り手企業のことを調べて倒産可能性が低いことを認識するのは大きなコストですが、手慣れた銀行が私たちからお金を預かって借り手企業のことを調べるのであれば、それほど困難なことではないでしょう。

 

さらなる問題もあります。倒産可能性が低くてもゼロではない場合、私たちは怖くて貸せない、という問題です。万が一の場合に老後が悲惨になるからです。しかし、銀行が大勢の預金者からお金を集めて多くの健全な企業にお金を貸すのであれば、そのうち1社が倒産しても大した問題にはなりません。

 

そうした事態に備えて、あらかじめ銀行は少し高めの金利で多くの借り手に融資をしておけば、倒産した企業が踏み倒した分については、ほかの多くの借り手からの高めの金利で儲ければよいのですから。

小口の短期資金を集め、「大口の長期資金」として貸す

学生がアルバイトで稼いだお金は、数日で使ってしまうかもしれませんし、そもそも金額が小さいので、工場建設資金として貸し出すことはまったく現実的ではありません。しかし、大勢の学生がいれば、バイト代が入ったときに「預金残高が増える学生」「使ってしまう学生」がいるでしょうから、学生全体の預金金額は一定かもしれません。

 

しかも、学生が卒業しても次の学生が預金者となるでしょうから、預金残高は永遠に一定かもしれないのです。そうなると、学生から預金を集めている銀行は工場建設資金を貸し出すことができるかもしれないのです。

 

一人ひとりの学生の余裕資金は小さく、かつ一時的なものであったとしても、それを銀行が集めることによって、大口の長期資金として貸し出すことができる、というわけですね。

 

実際には学生だけではなく、私たちも預金しているわけですから、多くの企業が工場を建てられるわけですね。ちなみに、私たちの資金は学生のアルバイト代よりは少し多いですし、途中で突然資金が必要になる可能性も小さいですが、本質的には同じことです。1人で工場建設資金を貸すことはできませんし、老後資金は次第に取り崩して生活に使っていくわけですから。

 

明治時代の経済人である渋沢栄一氏は、日本最初の銀行を作った人ですが、溝に溜まっている水やポタポタ垂れている滴を銀行に集めれば大河のような力を得る、と考えていたようですが、納得ですね。

現金書留より安全&手軽、かつ素早く送金できる!

銀行がないと、送金のたびに現金書留を使う必要があるので、手間もコストもかかるうえに、安全面でも懸念があります。私たちが通信販売で購入した代金をATMで振り込む、といった場合も便利ですが、輸出企業が輸出代金を海外の輸入企業から受け取る、といった場合にはさらに便利です。

 

輸入者に頼んでドルの札束を国際郵便で送ってもらい、それをだれかに頼んで円に替えなければならないわけですが、銀行に頼めば簡単に預金口座に円が振り込まれるわけですから。

 

以下は余談ですが、送金するA氏がB銀行に口座を持っていて、受取人のC氏がD銀行に口座を持っている場合、銀行間で何がおこなわれているのかをご紹介しましょう。

 

実際にはATMでボタンを何個か押すだけですが、裏では銀行間にメールが行き交っているのです。B銀行からD銀行に「C氏の預金残高を1万円増やしてくれ」とメールします。

 

D銀行にとっては、C氏の預金残高というのはC氏からの借金ですから、快く引き受けるわけにはいきません。そこでB銀行は「1万円は、現金書留で送るから」などと書き添える必要があるわけです。

 

実際には銀行間でも現金書留で送るわけではなく、日銀の口座を使います。B銀行が日銀にメールを送り、「私の残高を1万円減らして、D銀行の残高を1万円増やして下さい」と頼むのです。

 

B銀行:A氏からの借金が1万円減り、日銀への預金が1万円減る → 損得なし

 

日銀:B銀行からの借金が1万円減り、D銀行からの借金が1万円増える → 損得なし

 

D銀行:日銀への預金が1万円増え、C氏からの借金が1万円増える → 損得なし

 

手数料の話を忘れるとすれば、これで無事に送金がおこなわれた、ということになるわけですね。

 

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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