(※写真はイメージです/PIXTA)

国民年金の受給額は、満額でも月額わずか64,816円に過ぎない(令和4年度)。なぜかあまり知られていないが、掛け金+400円で、受取額を積み増しできる「付加年金」という制度がある。どのようなものなのか。

自営業の50歳、国民年金受給額の少なさに焦り…

「自営業でクリーニング店を経営しています。受取れる年金額が少ないため、NISAやiDeCoを検討しています。しかし、自営業仲間から、毎月たった400円多く保険料を納めることで、国民年金の受取額を増やせる制度があると聞きました。どういうものでしょうか?」

 

あまり知られていないのだが、国民年金には「付加年金」という制度がある。毎月の国民年金保険料に付加保険料を上乗せすることで、将来の年金額を増やすことができる。驚くべきことに、付加保険料は月々わずか400円。だが、どの程度増えるのだろうか?

 

日本年金機構のウェブサイトには、下記のような記載がある。

 

付加年金

 

第1号被保険者・任意加入被保険者が定額保険料に付加保険料(月額400円)をプラスして納付すると、老齢基礎年金に付加年金が上乗せされます。

 

付加年金の年金額は、200円×付加保険料納付月数。

お申し込み先は、お住まいの市区町村役場です。

付加年金は、老齢基礎年金と合わせて受給できる終身年金ですが、定額のため、物価スライド(増額・減額)はありません。

国民年金基金に加入中の方は、付加保険料を納付できません。

付加保険料の納付は、申し込んだ月分からになります。納付期限は翌月末日(休日・祝日の場合は翌営業日)です。納付期限を経過した場合でも、期限から2年間は付加保険料を納めることができます。

 

上記によると、毎年の年金額は「200円 × 400円を支払った月数」だけ増えることになり、また、この金額は永久に保障される。2年1ヵ月以上受取ると、支払った付加保険料以上の年金が受取れる計算だ。

 

付加年金として受取れる金額は、マクロ経済スライドの対象外のため増減はなく、必ずこの金額が受取れる(繰下げ・繰上げで増減する。下記に記載あり)。

年金が積み増しされるのはどのくらい?

では、この400円を支払うとどれだけ年金額が増えるのか、例を挙げて計算してみよう。

 

例えば、冒頭のクリーニング店経営の50歳男性が、50歳から60歳までの10年間、付加保険料を納めたとする。納めた保険料の合計額は、


400円 × 10年(120ヵ月) = 4万8,000円


上記のようになる。これに対して増える年金額は、


200円 × 10年(120ヵ月) = 2万4,000円


となり、毎年2万4,000円増える計算だ。

 

さらに、仮に85歳まで生きて年金を受取り続けたとすると、


4万8,000円 × 20年 = 48万円


これだけの年金額を多く受取れることになる。支払った保険料は4万8,000円なので、43万2,000円のトクだ。

 

仮に85歳まで生きると仮定して、

 

10年納めれば、保険料の合計は4万8000円。付加年金の年額は2万4000円、受給金額は合計48万円。

 

20年納めれば、保険料の合計は9万6000円、付加年金の年額は4万8000円、受給金額は合計96万円。

 

30年納めれば、保険料の合計は14万4000円、付加年金の年額は7万2000円、受給金額は合計144万円。

 

当然だが、付加保険料を支払う期間が長ければ長いほど、トクする制度となっている。毎月の掛け金はたった400円、コーヒー1杯程度。これならぜひとも加入すべきだろう。

付加年金「利用できる人・できない人」

だが残念ながら、付加年金はみんなが利用できる制度ではない。

 

【利用できる人】

 

●第1号被保険者(自営業、農林漁業、学生、無職、65歳未満の任意加入者など)


【利用できない人】

●第2号被保険者(厚生年金加入者)

●第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている配偶者)

●国民年金保険料の免除・猶予を受けている人

●国民年金基金の加入者

 

このようになっている。

 

付加年金は、国民年金のみに加入している人のための制度だ。国民年金のみの加入では、年金額はかなり少ないため、利用できならぜひ利用を検討しよう。

付加年金の注意点とは?

付加年金は、マクロ経済スライドの影響を受けないため増減しないしくみだが、国民年金自体を繰下げし、受給開始年齢を65歳よりも後ろ倒しにすると、付加年金も増額されておトクになる。当然、長生きすればするほど一層おトクになる。

 

また、付加保険料は全額が所得控除の対象であるため、税制面でも優遇を受けられる。

 

一方、留意点もある。付加年金は、2年で元がとれるが、万一65歳から2年以内に亡くなっても、納付した付加保険料は返還されない。年金を受取る前に亡くなってしまっても同様だ。また、国民年金自体を繰上げして65歳より早く受給開始すると、付加年金も減額される。

 

そんな「付加年金」という制度だが、厚生労働省年金局の「令和2年国民年金被保険者実態調査」によると、その存在を知っている人は42.9%に過ぎなかった。これほどおトク度の高い制度なのだから、活用しない手はない。

 

付加保険料は、納期限を経過しても、支払い期限から2年間は支払うことが可能だ。少しでも年金受給額を増やすため、ぜひ今からでも利用してはどうだろうか。

 

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