光熱費や物価の上昇により、多くの家計を圧迫しています。特に、年金収入で生活を送る高齢者は非常に深刻な状況となっているようです。本記事では、年金生活の70歳単身男性の事例とともに、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が、単身高齢者の貧困リスクについて解説します。
「年金月13万円」70歳単身男性…相次ぐ物価高で収支は赤字に「早く亡き妻に会いたい」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

子どもと同居か、自宅の活用か…

国の支援制度などを受けるためには、多くの制度で住民税が非課税世帯という条件があり、今回の拓郎さんの年金収入の13万円の手取り額があれば個人住民税も納付していると思われます。

 

生活保護を受ける場合では居住地区の最低生活費よりも低い場合に、最低生活費の差額分が支給されることになりますが、拓郎さんの場合では生活保護も難しいことを告げました。子どもの剛さんが遠方にいるので、剛さんとの同居もおすすめしましたが、土地勘や友達のいない場所への移住に不安を抱かれていました。

 

ただ、政府も最近の資源高による光熱費の高騰に対して、対策が検討され、2023年1月から「電気・ガス価格激変緩和対策」の実施が決まりました。この緩和対策は、一定の要件で使用量に応じた値引きを行うというもので、電気について低圧契約は1kWhにつき7.0円を、都市ガスについては1㎥につき30円を1月から8月まで、9月は低圧契約は1kWh3.5円、都市ガスは1㎥15円を値引きするというものです。

 

10月以降は未定となっていますが、今後も光熱費や物価上昇の可能性を考えると延長される可能性もあるのかもしれません。ただ、年金額は物価上昇と連動しないマクロ経済スライドが採られているため、拓郎さんの生活はさらに厳しくなることが考えられます。

 

拓郎さんは自宅を持たれていたので、自宅を担保に銀行から融資を受けて、死亡したときに自宅の売却代金などで借入金の一括返済を行うというリバースモゲージや自宅を売却し、売却したお金から家賃を支払っていくリースバックという制度の提案をしました。

 

拓郎さんは、どの方法で今後の生活費の補填をするか決められないようですが、剛さんとも話をしながら、今後の生活のために剛さんとの同居も合わせた方法を検討していくことになっています。

 

参考資料

厚生労働省:「生活保護制度の現状について」https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/000977977.pdf

総務省:令和3年度家計調査(家計収支編)https://www.stat.go.jp/data/kakei/2.html

 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表