◆WPPの効果(3)私的年金等の効果〜自助努力の「目標」が明確になる〜
WPPモデルでは、「先発」の役割を就労延長が、「抑え」の役割を公的年金がそれぞれ担うため、私的年金等による自助努力の範囲や目標が明確化するのも大きなメリットです。
自助努力による資産運用や資産形成が喧伝されるようになって久しいですが、自助努力で老後に備えるうえでの最大のハードルは、老後になって自分が「いつ死ぬか」あるいは「いつまで生きるか」を正確に予見するのが困難なため、いくら準備すればよいのかが不明な点にあります。
「老後生活に数千万円が必要」と言われてもその金額の高さに意気消沈するだけですし、仮に数千万円を準備できたとしてもそれで事足りる保証はありません。
しかし、自助努力で備えるべき範囲が就労引退から公的年金を受給開始するまで(5〜10年程度)と明確になれば、具体的に準備すべき金額が見えてくるため、目標意識を持った備えが可能となります。
さらに、5〜10年程度の備えであれば、有期(確定)給付あるいは一時金が主体となっているわが国の私的年金でも対応が容易になります。
◆WPPの効果(4)柔軟かつ多種多様な「継投」が可能〜
WPPモデルは野球の「継投」に例えられますが、野球の継投策にはワンポイント(1人の打者だけに投げること)やロングリリーフ(長いイニングを投げること)などさまざまな手法があるように、WPPモデルも、就労・私的年金等・公的年金の組合せは多種多様なパターンが考えられます。
また、WPPのうち真ん中のP、すなわち私的年金等の「中継ぎ陣」も、企業年金・個人年金・退職金・貯蓄・NISAなど、退職給付制度や金融商品の組合せも多種多様です。
そして、野球の継投策がイニング数・球数や相手打者の状況を見ながら投手交代のタイミングを決定できるように、WPPモデルも個々人のライフプランに応じて継投の順番・組合せ・タイミングを自由に決定できるという柔軟性の高いしくみとなっています。
谷内 陽一
第一生命保険株式会社・第一生命経済研究所
主席研究員