(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸物件を経営していると、入居者からクレームを受ける機会があります。実際に国土交通省が2019年に実施した『賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査』では、約52%もの不動産管理会社が「借主間・近隣住民との間の苦情対応が困難である」と回答しました。そのため、賃貸経営をする際は、どのようなクレームがあるのか、正しい対処法とともに知っておく必要があります。そこで今回は、賃貸管理でよくあるクレーム内容と対処法を紹介します。不動産投資でトラブルに巻き込まれたくない方は、ぜひ参考にしてください。

 

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賃貸管理でよくあるクレーム5選

不動産管理会社でさえ対応困難であるほど、賃貸物件では様々なクレームが寄せられます。よくあるクレームとしては、主に以下の5つがあります。

 

①騒音

②設備の不具合

③水漏れ

④入居者同士のトラブル

⑤ペット関連のトラブル

 

よくある事例を把握した上で適切な対処をすれば、トラブルが大きくなることを防止できます。まずはクレーム内容を詳しく見ていきましょう。

 

【①騒音】

アパートやマンションのように区画が隣接している物件では、騒音によるクレームが寄せられるケースが多くあります。騒音クレームの代表的な原因には、以下が挙げられます。

 

●足音や話し声

●子どもの泣き声や走る音

●洗濯機や掃除機などの生活音

●ピアノやドラムなどの楽器音

 

騒音の種類や時間帯によってはクレームにつながりませんが、夜勤や在宅ワークなどで入居者同士の生活スタイルがあわないケースでは、大きなトラブルに発展することも考えられます。

 

なお、賃貸物件の構造や断熱材が、音を伝わりやすくしている場合もあります。複数の入居者から騒音クレームが寄せられる場合は、賃貸物件の仕様を確認してみるのもよいでしょう。

 

【②設備の不具合】

エアコンや給湯器、トイレなどの設備の不具合がクレームにつながるケースも考えられます。物件設備が古いと、故障や不具合を起こしやすくなるので、トラブルの頻度と状況に応じてリフォームを検討してもよいでしょう。

 

なかには、「設備が汚い、使いにくい」といった声が寄せられる場合があります。ただ、物件設備を考慮した上で賃貸契約をしているので、原則として対応しなくても問題ありません。

 

なお、入居者が導入した設備に対する修理義務はないことも認識しておきましょう。

 

【③水漏れ】

水漏れの種類には、蛇口や排水トラップ、天井からの漏水などが挙げられます。隣接区画に影響がある場合は、損害賠償に発展する可能性があるので注意が必要です。

 

なお、蛇口の閉め忘れのように入居者に過失がある場合は、大家が損害賠償責任に問われるケースはほとんどありません。一方、給排水管などの物件設備による漏水は、入居者への損害賠償が発生するので、設備の老朽化には十分注意しましょう。

 

【④入居者同士のトラブル】

ゴミ処理や共用部分の利用マナーなどが原因で、入居者同士の衝突が発生することも考えられます。クレームに至らない場合でも、他の入居者に悪影響を与える可能性があるので、大家として対処するべき場面もあるでしょう。

 

クレーム対応をする際は、トラブルが大きくならないよう、双方の意見を聞いた上で解決方法を探していくことが大切です。

 

【⑤ペット関連のトラブル】

ペットの鳴き声やにおいがクレームにつながるケースもあります。また、飼育しているペットが他の入居者にけがをさせてしまう場合もあるので、賃貸契約書に「ペット禁止」や「小型犬のみ」といった条件を設定するのも手段のひとつです。

 

クレームを言う入居者のなかには「ペットを飼育できる物件だと知らなかった」と主張をする人もいるかもしれません。そのようなトラブルを防止するためにも、入居説明時にペット飼育可の物件であること伝えておくとよいでしょう。

賃貸物件でクレームを受けたときの対処法

入居者からのクレームに適切な対応ができなければ、退去や損害賠償の原因になります。ここでは、クレームを受けた際の正しい対処法を4つ紹介します。

 

<①素早く対応する>

クレームを受けた際は、素早く対応することが重要です。入居者から「すぐに対応してくれる大家だ」と認識されると、話し合いがスムーズに進みます。また、水漏れや設備不具合などの場合は、被害が隣接区画まで広がるケースもあるので、迅速に対応しましょう。

 

ただし、安易に「今すぐ修理する」「新品に交換する」といった連絡をするとトラブルにつながるケースもあります。入居者に対応方法を伝える際は、予測ではなく決定事項を伝えましょう。

 

<②管理会社に連絡する>

物件管理を委託している場合は、管理会社に相談してみましょう。管理会社に依頼すると、マニュアルに沿った適切な対応をしてくれます。そのため、入居者とのトラブルにもつながりにくく、不当な主張である場合は法的措置をとり、大家を守ってくれるでしょう。

 

<③クレームの原因調査をする>

クレームを受けたときは、入居者の主張や予測だけでなく、原因を特定することが大切です。対応方法を誤ると、トラブルが大きくなったり、多額の損害賠償が発生したりすることも考えられます。

 

無駄な時間とお金をかけないために、管理会社や工事業者に原因調査を依頼することも視野に入れておきましょう。

 

<④賃貸借契約書を確認する>

クレーム対応の際は、賃貸借契約書に該当する項目がないかを確認しましょう。契約書に関連するクレームであれば、入居者に契約内容を説明した上で対応方法を伝えると、話し合いがスムーズに進みます。

 

また、騒音やペット飼育などの禁止行為に該当する場合は、賃貸契約を解除することも可能です。

賃貸物件のクレームを減らすには事前対策が大切

賃貸物件のクレームを減らすには、事前対策が大切です。

 

たとえば、古くなった設備を入居前に入れ替えたり、入居条件を見直したりなど、物件の状況にあわせた対策をしましょう。また、管理会社と契約していると、クレーム対応を円滑にできるだけでなく、賃貸管理のアドバイスを受けられる場合もあります。

 

賃貸経営をする際は、どのようなクレームが寄せられるかを想定し、適切な事前対策をしておきましょう。

まとめ

賃貸経営をしていると、騒音や設備不具合、水漏れといった様々なクレームが寄せられます。クレーム対応が遅れたり不適切だったりした場合は、退去や損害賠償につながるケースも少なくありません。

 

大きなトラブルを起こさないためにも、本記事で紹介した「クレームを受けたときの対処法」を確認しながら、大家として適切な対応をしていきましょう。

 

 

執筆:東本 隼之

ファイナンシャルプランナー(AFP・2級FP技能士)、マネーライター

独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。金融記事を中心に300記事以上の執筆・編集・監修を担当。税金・社会保険・資産運用・生命保険・不動産・相続分野を得意とし、自身の経験に基づいたライティングを強みとしている。難しい金融知識を初心者にわかりやすく伝えることが得意。

 

 

監修:悠木 まちゃ

ライター・編集者

宅建士・FP3級の資格保有。国立校の建築学科を卒業後、ハウスメーカーに勤務し、営業・設計職を担当。新築戸建て住宅のほか、事務所建築や賃貸アパートの設計などを手掛ける。

その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動。実務経験を活かし、不動産・金融系の分野を中心に記事執筆から編集まで行う。多数の企業メディアで編集を担当するほか、ライター向けオンラインサロンの添削講師としても活動している。

 

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※本連載は、J Sync株式会社が運営する『OWNERS.COM』(https://cf-owners.com/)のコラムを転載したものです。

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