相続に関して最も優先して対処すべきは「今突然亡くなる」リスク
私はファイナンシャルアドバイザーとして、日々お客様の資産運用やライフプランについてのアドバイス業務を行っている。日々の業務のなかで、最もセンシティブかつ、お客様のもつ情報と我々のもつ情報に乖離が見受けられるのが相続に関するテーマであると感じる。
資産をおもちの方で、相続について考えないといけないと感じている方は大変多くいる一方、相続税がどれくらいなのか、具体的なイメージを抱けている方は少ない。その理由として最も多いのは、実際に相続が発生するタイミングは、まだ先だと考えているというものである。
日本人の平均寿命はどんどん伸び、人生100年時代と言われているため、実際に相続が起こるタイミングはかなり先になるかもしれない。しかし、病気や事故と同じで、いつ何が起こるかはわからない。相続について考えるうえで、最も考えなければならないのは、「今突然亡くなってしまう」というリスクなのだ。
相続税の落とし穴「10ヵ月で資産を現金化」の難しさ
例えば、今5億円の資産があり、奥様とお子様1人が相続人になるとすると、最大で1人あたり約4,000万円の相続税を負担することとなる。資産の多くが現金であれば払うことは可能であろうが、不動産や会社の株式の割合が多く、相続税の支払い期限である10ヵ月以内に現金化できず、相続税が払えないケースが考えられる。
つまり、自身が築き上げてきた資産によって大切な家族が困ってしまう場合が考えられるのだ。しかし、仮に10年早く対策をすることで、1人あたり1,000万円近く相続税額を減らすことができる可能性がある。
そのうえ、早く対策をしておくことで、相続した資産を無駄遣いしないように使途に制限をつけたり、子どもたちが争わずに済むよう、予め分け方を定めておくことができる。
相続はセンシティブな問題であるため、考えること自体に非常に労力がかかるが、実際に相続が発生した際の相続人の負担も大きい。そのため、今自分にもしものことがあった時のために、早い段階から相続について考えていく必要がある。
とはいえ、相続について考えるといっても何から考えればよいのか、わからないという方も多いのではないだろうか。相続について考える際、手順として大きく3つの項目に分かれる。
3つの項目とは、①納税、②分割、③節税である。今回の記事では、この3つの内、手始めとなる「納税」の部分と、最も揉めるケースの多い「分割」の部分について詳しく紹介していく。