「対スパイ」の姿勢を強める欧米。一方、日本は…
イギリスの「とにかく中国とのつながりを断つ」方向へ
また今後どのような規制が発生するかわかりませんので、大学との提携だけではなく共同研究や研究者の招聘、会議の共同開催などもやめるところが増えてきています。
これはシンクタンクやイギリス政府の調査で、イギリスのトップ24校の大学のうち14校の大学が中国の軍事技術会社や中国人民解放軍とつながりがある大学などと発表されたことも大きいでしょう。
マンチェスター大学の場合は同校が開発したアプリが中国で軍事企業により使用され、ウイグル人の監視に使われたということが指摘されて提携を解消しています。
このような例の場合、ソフトウェア製品などの一部が中国で軍事目的に使われる可能性もあります。
イギリスの大学側はどのように使用されるかということを確認できなかったり自覚していなかったりする場合があり、とにかく中国とのつながりを断つという方向に動いている大学が多いのです。リスクを避けることが難しくなるからです。
一方でシンクタンクの「Henry Jackson Society」によれば、イギリスでは900人近い中国人学生が軍事関係の技術や知識を学んでいることが明らかになっています。
アメリカは「12時間ごとに」中国のスパイ活動を調査
MI5と共同で中国のスパイ活動に対処しているアメリカのFBIは、アメリカ政府は12時間ごとに中国のスパイ活動に関する調査を開始するような状態で、過去7年で中国の西側の知的財産に対するスパイ行為は1,300%増加したと述べています。
2021年にはイギリス外務省が税務当局とともに、イギリス国内の重要機密を中国に漏洩した疑いで複数の大学を調査しました。そしてまたイギリス情報局の秘密情報部、いわゆるMI6(Military Intelligence Section6)も10以上の大学を調査したのです。
さらには輸出法違反で調査を受けた大学の教員や研究者は約200名に達します。イギリスの法令である「2008年輸出管理令」では重要機密などの漏洩は最高で懲役10年と重い罪なのです。
一方、「スパイ防止法」が存在しない日本では…
日本国内では日本の大学が軍事研究をすることが左翼系の人々に非難され話題になります。
しかしなぜか日本国内で軍事技術に転用可能な技術や知的財産に接触する中国人民解放軍とつながりのある研究者や学生のことはまったく取り上げられないようですね。
谷本 真由美
公認情報システム監査人(CISA)
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