動物医療の地域格差は、獣医師間でも認識されていない
同じ命が大都市にいれば当たり前のように助かるのに、地方に住んでいるというだけで助からない。動物医療にこれほど地方格差があることをどれほどの人が知っているのだろうと、東京で研修医になった私は思いました。
私がずっと地元にいたときには、難しい病気なら助けることができないのは残念だけれど仕方がないと、当たり前だと受け入れつつありました。動物医療の世界では研修医制度が定められていない以上、大学卒業後に就職した場所が修業の場となります。新卒で地方に就職しそのまま地方で診療を続けていると、高度な医療は別世界のものと考え、助けられないことにあまり疑問を抱かなくなったとしても不思議ではありません。一方で、日々、高度医療を当たり前に実施している大都市の病院では、毎日治療で元気になって飼い主のもとに帰っている動物たちがいて、大都市の獣医師たちはよもや同じ病気で地方では手の尽くしようもなくたくさんの命が失われていることなど思いもしないはずで、すさまじい落差があるのが現実なのです。
地方の動物病院と大都市で高度医療にあたる動物病院の間に医療連携が整っていないのですから、二次診療を求めて地方からはるばる受診しにくる飼い主もごく少ないはずです。地方の獣医師や飼い主たちが高度医療と思っているものも、大都市の獣医師は普段の一般的な医療と認識している場合があります。ここには大きな隔たりがあります。動物医療が地方では孤立無援でいることを、まずはできるだけ多くの人に知ってもらいたい、それが私の最初の願いです。
川西 航太郎
動物病院ハートランド 水戸動物CT・MRIセンター 院長