(※写真はイメージです/PIXTA)

「受験」とは何か、なぜ必要なのか。単に「自分の学力にあった学校で学ぶ資格を得るため」に留まらない「受験の意義」について、花咲スクール代表・大坪智幸氏が解説します。

「受験」とは何か?

この問いに対し、誰もが納得する答えは存在しないでしょう。改めて訊かれるとなかなか難しい問いです。受験についての認識は、それぞれの組織や立場、家庭によって変化していくと思います。しかしながら部分集合的には、みなさんが思うものすべてが正解である、と言うこともできるのではないでしょうか。たとえば、「自己実現の手段」や「成長の機会」がこれに当たると思います。今回は多くの人が初めて経験する、高校入試にフォーカスして考えてみたいと思います。

 

今、みなさんの目の前にある物事には、原因と結果、目的と手段が存在しており、それぞれが因果律で説明され、結ばれていることと思います。では、そもそも受験とは何のために存在しているのでしょうか。存在には因果律があるはずですが、つい受動的になり、あるのが当たり前になってしまいます。

 

私自身、この問いは非常に悩みましたが、哲学や物理学、人間科学など、分野を横断することで初めて、答えに近付いた気がします。昨今しきりに叫ばれる分野横断的思考とはこういうことかと、子どもたちと共に私も勉強中です。

成長速度の差が生む「落ちこぼれ」「吹きこぼれ」問題

さて、まず考えるべきは、主役である子どもたちの成長スピードであり、そこに差が生じてくるのは一体、いつ頃かということです。〇〇の壁で有名な小1、小4、中1、高1と答える方が多いのではないでしょうか。私もそう思います。学習内容や実際の点数の差など定量的根拠のある学年なのではないでしょうか(心の面を捉えれば、中学2年生という答えもあるかもしれません)。

 

では次に、そこで生じる歪みや、起こり得る問題は何でしょうか。これも多様な答えがあると思いますが、私は「落ちこぼれ」と「吹きこぼれ」であると考えます。心や体の成長スピードは、人それぞれ違います。平均値を求めることはできても、ひとりひとりバラバラであるのは、みなさんご承知の通りです(原因は学校なのか、地域なのか、家庭なのか、急速なIT化なのか、その差が大きくなっていると感じているのは私だけではないと思いますが、話題が逸れますので深入りはまた別の機会に)。

 

この「落ちこぼれ」「吹きこぼれ」問題を解決する手段が受験なのではないかと私は考えています。そう、大きな枠での個別最適化です。ここ数年で他業種から引用され、教育業界でも注目を集めている言葉ですが、システムとしてはすでに存在していたと言えます。集団授業を行う学習塾や一部の学校では当たり前の、レベル別や習熟度別という編成です。多くの人が初めて経験する高校入試時点での年齢は15歳です。この15歳が大切な要素であると思っています。

基礎的読解力は「15歳まで」に決まる

国立情報学研究所と名古屋大学による、基礎的読解力の上昇と年齢についての研究では、義務教育が終わった時点、つまり15歳までに基礎的読解力は決まるという結果が出ています。以降の伸びは見られず、およそ25%の生徒が教科書レベルの基礎的読解力を身に付けないまま、義務教育を終えている恐れがあると指摘されています。

 

また、基礎的読解力と進学できる高校の偏差値との間には強い相関があり、個別最適化のためのシステムとして、やはり受験は必要なのだと考えます。生徒を決まった枠にはめ込んで、その集団内の普通を追い求めるのではなく、それぞれが本来の力を発揮しながら、日々成長していくことが望ましい姿であるのは言うまでもありません。

受験とは、「あるべき姿」を叶えるために必要な選抜

「普通が一番難しい」。これは有名な言葉ですが、小学校から高校までずっと平均や普通を追い求めていては、自己実現はおろか、今後迎える新たな時代で生きていくのもやっと、ということになってしまうでしょう。あるべき姿、それを叶えるための手段、すなわち受験は必要であり、存在するのではないでしょうか。ただし、教育における個別最適化については、それだけで進めていこうとするのは避けた方がよいと思います。個人と社会のバランス感覚は、中学生などの多感な時期に育まれ、その時期に導くべきだと考えているからです。

 

それでは、受験者を迎える立場、学校側では、どう捉えているのでしょうか。学校にとって受験とは、信念を共にできる仲間選びの場や手段と言えると、私は考えています。特に私立や進学指導重点校(自治体により異なる名称)において、教育理念や校訓を体現し、より良い社会を実現していける生徒に来てほしい、という確かな想いを感じます。理事長や校長と話をする際、毎回、熱意に圧倒される理由はそこにあると思います。そう、誰でもいいわけではないのです。学力と人間性のバランスが取れて初めて、それぞれの想いが一致し未来が創造されていくのだと私は考えています。この点において、受験という選抜はあって然るべき存在ではないでしょうか。

 

 

大坪 智幸

株式会社花咲スクール 代表取締役、本部校教室長

 

郵便局員、新車営業の経験を通し社会の矛盾に気付き、教育業界に転身。塾講師、通信制高校教師を同時にこなす中、肺炎を患い生死をさまよう。その後、大手学習塾にて講師を務め、花咲スクールを開校。一人一人に真摯に向き合い、自主性を引き出す教育方針に定評があり、口コミや紹介での入塾者が後を絶たない。最近は、居合道と大学院でアップデート中。

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    ※本連載は、花咲スクール代表・大坪智幸氏による書下ろしです。

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