「自分らしく自由に働く」と意気込んだ20代でも…
『労働力調査』(総務省統計局)によれば、2022年10月現在、日本国内の就業者数は約6,800万人。だが、就労形態はさまざまで、正社員や契約社員、フリーランス、パートタイマーなど、様々な働き方で就労する人たちすべての集計だ。
生涯賃金や年金額についてたびたび論議されている非正規就労だが、1,000万人超ともいわれる彼らのうちの約3割ほどは、自ら非正規社員を選択していると想定されている。
非正規の立場を選択する人の事情や背景はさまざまだ。正規就労と目指しても希望通りにならないという人はもちろん、子育てや介護などで就労時間に制限がある人、あるいは配偶者の転勤に帯同するなどして、正規の立場で働きにくい人もいる。なかには、世帯所得が高く、二馬力で働く必要がない、不動産などの収入があるといった理由から、負担の少ない非正規で就労している人もいる。そして、「会社組織に組み込まれることが苦痛」「自由に働きたい」という理由を挙げる人もいる。
就職氷河期と呼ばれた時代にも、このような「自ら非正規を選択」する学生は一定数いた。成果の出ない就職活動に嫌気がさし、自分らしく自由に働く道をあえて選んだ学生だ。
実際、大学卒業後にパート・アルバイトとして働いても、それなりには稼ぐことができる。『令和3年賃金構造基本統計調査』(厚生労働省)では、パート(短時間の常用労働者)の1時間当たりの所定内給与額は平均1,384円であり、1日あたりの所定内実労働時間5.1時間、1ヵ月の実労働日数は14.7日。1ヵ月の平均給与はおよそ10.3万円になる計算だ。もし同じ時給で1日8時間(休憩除き7.5時間)、22日働いたとしたら、およそ22.8万円となる。
大学卒業後、正社員として働き始めた人たちの給与(所定内給与額)は、平均21.8万円(2019年、大学新規学卒者の所定内給与額から通勤手当を除いたもの)であることから、そこまで大きな差はないといえる。賞与を含めた正社員の年収は約335万円と、パート・アルバイトと比べて、約50万円の差はあるものの、心身の負担の軽さと天秤にかけるなら、あまり気にならないといったところなのだろう。
正規と非正規の年金受給額、20年で1,600万円の差
就職氷河期に自ら非正規社員となった人たちだが、正規社員となった人たちと比較した場合、どの程度の差があるのだろうか。
2000年の大学卒正社員の初任給は19.7万円。同時期のパート・アルバイトの平均時給は1,026円。1日8時間、1ヵ月で22日働いた場合は16.9万円だ。平均値ではあるが、月に約3万円ほどの差となっている。
そして月日は流れ、大学卒業からおよそ20年。2023年には40代後半になっている彼らだが、「レールに乗った人」と「レールを降りた人」を比較すると、どの程度差が開いているか。『令和3年賃金構造基本統計調査』(厚生労働省)から、正規と非正規の数字を見てみよう。
【正社員】
40代後半の大卒平均給与は月45.5万円。結婚して子どもが1人なら、手取りは35万円程度。た賞与を含めた年収は、748万円程度。
【非正規社員】
40代後半の大卒平均給与は月26.4万円。結婚して子どもが1人なら、手取りは21.5万円。独身なら20.5万円程度。賞与も含めた年収は365万円に程度。
大学卒業から20年、月の手取りは10万円以上、年収倍以上の給与格差が生じている。
年を重ねるごとに、「レールに乗った人」と「レールを降りた人」の給与格差は広がり続け、まず埋まることはない。あくまでも現在の統計調査に基づいた推論だが、もし65歳まで正社員を続けた大卒の会社員の平均標準月額は56万円。厚生年金受給額の下記計算式にあてはめると、厚生年金部分は15.4万円、国民年金が満額支給なら、月年金額は22万円だ(便宜上、②のみで計算)。
①加入期間が2003年3月まで
平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数
②加入期間2003年4月以降
平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数
非正社員であり続けた場合、大卒の非正規社員の平均標準月額は32万円。厚生年金受給額の計算式にあてはめると厚生年金部分は8.8万円、国民年金が満額支給なら、月年金額は15.3万円だ。
正社員との非正規社員の年金差は月6.7万円で、年間80万円程度。これが10年なら800万円、20年なら1,600万円の差になる。1年80万円の格差は、あまりに大きいのではないか。
現在の統計調査に基づいたものであり、今後も同様の結果になるとはいえないし、自力で会社員など足元にも及ばない、多額の収入を得ている人はもちろんいる。多様性の時代、本人が望む選択肢がベストであることはいうまでもない。
だが、「非正規社員」の立場に将来不安や限界を覚えるのであれば、速やかな方向転換が重要だ。働き方のスタイルや仕事の内容にこだわるばかりでなく、「経済面」という切り口から仕事を選びなおし、将来受け取る年金額額の増額を狙うのも、有意義な選択肢だといえる。
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