中小企業、賃上げブームに乗り遅れ…さらなる不安も
また今回の相次ぐ賃上げのニュースは大企業が中心。大企業は日本の企業のわずか1%、従業員数はおよそ3割。圧倒的に中小企業勤務の会社員が多く、連日の報道にため息をついています。
厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、大企業勤務の大卒会社員(従業員1,000人以上企業、正社員)の平均給与(所定内給与)は43.1万円、年収は740.4万円。一方、同条件でも中小企業(従業員10~99人)だと、平均給与は月35.0万円、年収は531.4万円。
また年齢別にみていくと、大学を出たばかりでは50万円弱だった年収差は30代前半で150万円、40代前半では200万円、50代前半には300万円と、格差は拡大していきます。
【大卒・会社員「大企業と中小企業」給与の推移】
20~24歳:3,594,400円/3,099,100円
25~29歳:4,985,600円/3,788,400円
30~34歳:6,066,700円/4,501,200円
35~39歳:7,146,100円/5,188,900円
40~44歳:7,928,400円/5,646,300円
45~49歳:8,536,200円/6,075,200円
50~54歳:9,712,100円/6,411,400円
55~59歳:9,624,500円/6,271,000円
60~64歳:7,488,800円/5,605,100円
出所:厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より
※数値は左より、男性・大卒・従業員1,000人以上企業の年収、男性・大卒・従業員10~99人企業の年収
また大企業では賃上げムードですが、中小企業はどうなのでしょう。東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)』では、2022年7月の都内中小企業の給与は前年比4.2%アップと、賃上げは中小企業にも波及しているようにみえます。しかし中小企業勤務の会社員からは「全然、給与はあがらない」という声ばかり。どうも統計調査とは乖離があるようです。
さらに、街からはこんな声も。
――大企業の人件費アップのしわ寄せが、中小にこなければいいけど
確かに、今回の賃上げは景気を反映したものではなく、物価高への対応であったり、人材確保の面が強く、企業側が「身を削る」部分が多いとされています。人件費の増加が経営負担になりかねません。どこで帳尻を合わせるか……結局、下請けとなる中小企業に負担がまわされるのではないか、そして中小企業勤務の会社員の給与に影響するのではないか、そんな心配があるというのです。
中小企業勤務の会社員を取り巻く不安が、杞憂で終わるのか、それとも現実になるのか。多くの人が固唾を飲んで見守っています。