(※写真はイメージです/PIXTA)

団塊の世代がすべて後期高齢者になる2025年、日本人の4人に1人が75歳以上という、歴史上どの国も経験したことのない超・高齢社会が到来します。一方の出生数は減少が続き、2021年は81万人程度。今後もさらなる減少が予想されています。そのような背景から、日本の年金制度はいずれ形ばかりになるのでは…との危機意識が高まっていますが、実情はどうでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

国民年金の半分は、税金が投入されている

もうひとつ、忘れてはならないのは、1階部分の国民年金(老齢基礎年金)の半分は税金が投入されている、ということです。高齢者の支払った消費税や企業が支払った法人税等々も年金支払いの原資として使われているわけですから、現役世代が減ることの影響は軽減されているわけですね。

 

これに関して覚えておくべきことは、自営業者等が現役時代に年金保険料を払わないと、老後に年金が受け取れないので、老後に自分が払った消費税等の税金が他人の年金の支払い原資となってしまう、ということです。

 

「年金保険料を払わない人が多いから年金財政は破綻する」という人もいるのですが、年金保険料を払わない人は将来年金が受け取れないので、年金財政破綻の原因にはなりません。むしろ、年金を受け取る人が減る分だけ年金財政の破綻を防いでくれるのです(笑)。

 

そうした人は生活保護を申請する可能性もありますから、日本の財政を全体として考えれば、やはり好ましくはありませんが、それは年金の将来とは直接関係ないので、本稿では考えないことにしましょう。

年金の支払いを「死守せざるを得ない」背景

日本は財政赤字が巨額だから、税金を使って高齢者に年金を払うことが難しくなっていくのではないか、と心配している人も多いでしょう。日本の財政がどこまで厳しくなるのかということもありますが、筆者はあまり心配していません。財政についてあまり心配していない、という話は別の機会に詳述するとして、政府は財政が破綻しない限り年金の支払いを頑張る筈だと考えているからです。

 

シルバー民主主義という言葉があります。高齢者は人数が多い上に選挙に行くが、若者は人数が少ない上に選挙の投票率が低いので、政治家は高齢者のための政策を採用したがる、ということです。

 

その昔「猿は木から落ちても猿だが、政治家は選挙に落ちたらただの人だ」とか言った人がいるそうですが、政治家の多くは次の選挙のことを考えているので、高齢者を怒らせるような政策を採用したがらないのは、仕方ありませんね。

 

というわけで、若者のための政策予算を削っても年金の支払いだけは確保しようと考える政治家が多いので、年金に税金が投入される制度は維持される可能性が高いわけです。

 

日本国の将来を考えると、若者のための予算も重要だと筆者は思っていますが、その話も本稿の関心事項から逸れますので、取り扱わないことにしましょう。

 

政治家が気にしているのは高齢者の投票だけではありません。年金を払わなければ、生活保護の申請が激増して財政が破綻してしまうかもしれません。それを考えると、何としても年金の支払いは死守せざるを得ないのです。

年金が減ったら、定年後も働いて稼げばいいだけ

最後に発想を転換してみましょう。年金受取額が減るのは、高齢者が長生きをするからです。単に長生きをするだけではなく、最近の高齢者は元気です。

 

サザエさんの登場人物である波平氏は54歳という設定です。年金制度ができた頃の定年は55歳でしたが、それはバリバリ働くのが無理だからお引き取りいただく、という意味だったのですね。

 

いまでは波平氏より元気な高齢者は大勢いますから、そういう人は働いて稼げばいいのです。年金が減ったら、定年後も働いて稼ぎ、老後資金を増やせばいいのです。しっかり働いて稼げるならば、「老後」を短くすることができるかもしれません。

 

幸い、少子高齢化で労働力不足の時代ですから、高齢者でも仕事を探せば簡単に見つかるでしょう。少子高齢化にも、悪いことばかりではなく、良い面もあるのです。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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