協業すべき不動産業者・弁護士・法人の特徴
ただし、協業相手の弁護士選びは慎重にしなければなりません。肩書は同じ弁護士でも得意分野はさまざまです。全員が不動産関連の法律に精通しているわけではありません。
以前このような例がありました。とある弁護士が、私の顧客である地主が保有していた土地の借地人の成年後見人に就任しました。その弁護士は、借地権を私の顧客である地主へ売却することを目的として、第三者に売却することを匂わせながら、強気な交渉を仕掛けてきました。これに対し、地主から依頼を受けた私が第三者への売却も含めて拒否すると、その弁護士は借地非訟制度を用いて不動産業者への買取りを強行してきました。
しかし、その審理のなかで、不動産業者が買い取ったあとの再販売の際にもさらに譲渡承諾料が必要となることや再販売後の買主に融資が認められず、それでは売り物にならないことを初めて知ることになります。結局、その借地人は売却を諦めざるを得なくなりました。
このように、成年後見人等に就任した者が弁護士であったとしても、必ずしも不動産関連に精通しているとは限らないのです。しかも、精通している弁護士は多くありません。
これからは法人後見と併走した不動産売却案件が増えていきます。そこで必要とされるのは「成年後見制度をよく理解している不動産業者」、「成年後見制度を理解しつつ不動産関連の法律や実務に精通している弁護士」、そして「後見人を受任できる法人」の協業です。
この3者が協業すれば、時代のニーズに合った業務をスムーズに行うことができます。
そのことは不動産業者にとっても業務の幅を広げ、多くの人の役に立つことにつながるはずです。
また、2022年8月12日の東京新聞に「成年後見制度について、法務省が民法改正に向けた検討を始めたことが12日、分かった。現在の仕組みでは、利用を始めると原則、途中でやめたり後見人を替えたりすることができないため、必要なときだけ使えるようにするほか、後見人を柔軟に交代できるようにする方向だ。利用者が後見人に支払う報酬も、いくらかかるか分かりにくい仕組みを改める考え。政府は2026年度までに民法など関連法案の国会提出を目指す。実現すれば、制度が2000年に始まってから初の大幅な改正となる。」との記事が掲載されました。
この改正が実現されたとしても、弁護士によるスポットでの後見人の必要性や、身寄りのない方の法人後見の必要性などが変わることはありません。
一方で、今のところ成年後見人を法人で受任する法人はまだ少なく、弁護士を通じて、この協業体制を構築している例もかなり少数といえます。そこで、今のうちからこの協業体制を構築するためにも、まずは弁護士との協業をおすすめしたいと思います。
鈴木 洋平
LTRコンサルティングパートナーズ
理事