「法人後見」という効果的な解決策
私はこの問題を解決する手段として、「法人後見」という手段が最も効果的であると考えています。法人後見とは、成年後見人(保佐人や補助人も含む。以下成年後見人等とします)に、社会福祉法人のほか一般社団法人、特定非営利活動法人つまりNPOなどの法人が着任することです。
最高裁判所事務総局家庭局が毎年出している「成年後見関係事件の概況」によれば、成年後見制度が開始された2000年当初は、親族が成年後見人等に選任されたケースが90%以上を占めていました。しかしその親族が自身のために被後見人の財産を利用してしまうことがたびたび問題視され、2021年度には19.8%まで減少しています。
そこで現在、親族以外ではどのような人が成年後見人に選任されているかといえば、遺産分割協議や訴訟などの法律関連が問題となる場合には弁護士、資産よりも本人の生活面が問題となる場合には社会福祉士、いずれでもない場合には司法書士という3士業が多くを占めます。2021年度では3士業だけで8割を超えています。
しかし前述のとおり個人で成年後見人等を受任するのは限界があり、最近は法人がその選択肢となる流れが加速しています。最高裁判所の「成年後見関係事件の概況」によれば、2000年度に法人が成年後見人等に着任しているのはわずか0.4%でした。これが2021年度には12.2%まで上昇しています。
法人が成年後見人等になる大きなメリットは、組織的な対応が可能になることです。
法人ならば人員を増やしたり、役割分担をしたりすることで数多くの成年後見を受任することができます。また、法人の担当者は、常に管理職から指導や助言を受けながら後見業務を進めることができますし、仮に担当者が病気になったり家庭の事情などの不具合が生じたり、本人との相性がどうしても合わないなどの場合は、別の担当者に交代することができます。そして、法人内に過去の経験と知識が蓄積され、後継者が引き継ぐことも可能になります。
一方で弱点もあります。それは弁護士のように法律事務を取り扱うことができないことです。
仮に組織内に弁護士を雇っていたとしても、法人自体が法律事務を取り扱う前提で成年後見人等になることは弁護士法上の問題がありますし、そもそも家庭裁判所が選任してくれません。また、成年後見人等に受任することを掲げている法人であっても実力は千差万別であり、家庭裁判所としても実態をつかむことは困難です。そのため、今のところ家庭裁判所が法人を成年後見人等に選任する例は主流になっていません。