健康経営の始め方
健康経営に取り組む場合、どのようなことをする必要があるのか具体的に紹介します。
1:トップが、自身の言葉で宣言をする
経営トップによる従業員への宣言から、健康経営の取り組みはスタートします。自社の成長・発展に健康経営が必要であることを経営者自らの言葉で従業員へ語ってください。また、経営者は従業員の見本になるよう健康維持・増進に率先して取り組むことも大切なことです。
2:推進部署、推進担当者を決める
健康経営の取り組みが後回しにされないよう、健康経営の推進部署や推進担当者を決め、健康経営を着実に進めていきましょう。
3:自社の経営課題、健康課題を把握する
健康経営で解決したい経営課題を設定します。課題は複数抽出されるものですが、その中で主に組織や人材にかかわる経営課題や企業そのものの価値向上に関する経営課題解決の手段として健康経営は活用できます。経済産業省が行っている健康経営度調査では、健康経営で解決したい経営上の課題として5つの項目が挙げられています。
健康経営の実践で解決する経営課題を設定したあとは、関連する健康課題の抽出を行います。健康課題の洗い出しについては、健康診断の結果を活用することで健康上どういう問題を抱えている人がどの程度いるのかを把握できます。また特定健康診査の問診票では、たばこを吸っているか、朝食を食べているのかなどの質問がありますので、生活習慣についても確認ができます。
経済産業省が行っている健康経営度調査では、健康経営で解決したい経営上の課題として10の項目が挙げられています。
1 健康状態にかかわらず全従業員に対する疾病の発生予防
2 生活習慣病等の疾病の高リスク者に対する重症化予防
3 メンタルヘルス不調等のストレス関連疾患の発生予防・早期発見・対応(職場環境の改善等)
4 従業員の生産性低下防止・事故発生予防(肩こり・腰痛等の筋骨格系の症状や、睡眠不足の改善)
5 女性特有の健康関連課題への対応、女性の健康保持・増進
6 休職後の職場復帰、就業と治療の両立
7 労働時間の適正化、ワークライフバランス・生活時間の確保
8 従業員間のコミュニケーションの促進
9 従業員の感染症予防(防インフルエンザ等)
10 従業員の喫煙率低下
健康課題を設定するためのデータが整理されていない場合は、一般的な傾向や同業種の他社事例などを参考にする方法もあります。また、経済産業省の働きかけにより健康経営の取り組みを「戦略マップ」などの形式でホームページ上に公開する企業も増えています。他社事例を参考に健康課題を仮で設定し施策を講じつつ、自社で健康診断結果や従業員の生活習慣などのデータの取得・分析をすすめ、自社の健康課題を把握するのもよいでしょう。
4:社外リソースを活用して、無理なくスマートに施策を実践
健康経営で解決したい経営課題、さらにそれに関連する健康課題を把握したうえで、実際に施策に取り組みます。健康経営の専任担当者を置くことが難しい、または知識不足といった人的リソースの不足という問題がある場合は、健康経営に詳しい社会保険労務士や中小企業診断士など専門家との連携や、厚生労働省や商工会議所・商工会など公的な機関からの情報提供などもうまく活用していくことをおすすめします。
公的な機関からの情報提供の例として、厚生労働省が運営しているサイト「健康寿命をのばそう!アワード」があります。このサイトでは、業種や規模、エリアに加え、適切な食生活、禁煙などの目的別に、企業の取り組みを検索することが可能です。外部リソースもうまく活用しながら、健康経営に取り組みましょう。
5:施策の効果検証・改善をする
健康経営の各施策は、健康課題の解決、さらには経営課題の解決の手段として実施するものです。そのため、各施策がどの程度の成果を出しているのか確認し必要に応じて施策の見直し、改善を行っていく必要があります。
【評価指標のポイント】
評価指標を設定するにあたり、以下の4点を意識するとよいでしょう。
1 設定した経営課題や健康課題の解決につながる指標であること
2 改善可能であること
3 数字で評価できること
4 数字の把握が難しくないこと
6:社内外にアピール!健康経営優良法人の認定にチャレンジ
社内外に取り組みをアピールするため、認定を受けてみましょう。認定を受けることにより、健康経営の取り組みが一定のレベルに達していることが客観的に示されます。認定制度として有名なのは経済産業省が行っている「健康経営優良法人認定制度」です。企業の規模により「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つの部門が設定されています。
認定企業のうち、さらに上位の法人に対し大企業法人部門ではホワイト500、中小規模法人部門ではブライト500の称号が贈られます。申請にあたっては経済産業省のホームページをご確認ください。
まとめ
これまではコストまたは義務としてとらえられがちであった従業員の健康管理が、企業価値向上の手段としてとらえなおされています。今後の企業の発展のための“投資”として、積極的に従業員の健康維持・増進に取り組んでみてはいかがでしょうか。
渡辺 敏成
株式会社リンクアンドコミュニケーション
代表取締役社長