「人的資本経営」とは?
昨今、「人的資本経営」というワードをよく耳にします。「人的資本経営」とは、持続的な経済成長を支える原動力は「人」であることを理解し、戦略的に人への投資をすることで、中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方をさします。企業による「人への投資」には従業員の健康・安全への投資も含まれ、この取り組みの一環となる「健康経営」にも注目が集まっています。
実際、経済産業省が行っている健康経営優良法人認定制度への申請数は毎年増えており、健康経営に関心を持って取り組む企業が増えています。今回は、健康経営の定義や取り組むための具体的な方法についてご紹介します。
これまでは“コスト”と認識されていた健康経営だが…
健康経営の定義は以下のとおりです。
これまでも企業は従業員の健康管理に取り組むよう労働安全衛生法で定められてきましたが、その取り組みは“コスト”として認識されていました。今後は、企業の発展のための“投資”として認識し、積極的に従業員の健康維持・増進を図っていこうという考えが、健康経営です。企業が健康経営に取り組むことで、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果として業績向上や株価向上、さらには社会の発展につながると期待されています。
どんな投資効果(=メリット)があるのか?
健康経営に取り組むことで、どのような“投資効果(=メリット)”があるのでしょうか。
■1.従業員のパフォーマンス向上
企業にとって最も重要な資源は従業員だといえます。その従業員が健康問題を抱え、早退や欠勤、休職が発生すると企業の生産性は下がってしまいます。実際、「出勤はしているものの体調が優れず、生産性が低下している状態」(プレゼンティーイズム)による労働生産性の損失は、欠勤などによる損失(アブセンティーイズム)よりも大きいという調査結果(※)が出ています。健康経営を通じた生活習慣などの改善は、従業員が本来の能力やパフォーマンスを発揮することを助けるため、生産性の向上が期待できます。
■2.社会的評価と企業イメージの向上
昨今は、商品やサービスが安くてよければ受け入れられるのではなく、消費者や利用者のもとに届くまでの過程や構造に社会的に関心が高まっています。サービスを提供する企業の社内外での取り組みを消費者が評価するようになったため、経済産業省が行っている「健康経営優良法人」の認定の有無で、社会的評価や企業イメージが左右されることがあります。
■3.採用力向上
社会的評価や企業イメージが向上することで、採用活動にも有利に働きます。生産年齢人口の減少が明確な日本では、求職者優位の「売り手市場」の傾向が今後も強まっていくことが予測されます。求職者から働きたい場所として選ばれ続けるためにも、健康経営の必要性は高まっていきます。
■4.従業員の定着・離職率の低下に寄与
社会的評価の高い企業に勤務することは従業員にとっても誇らしいことであり、既存の従業員の定着にも寄与します。実際、健康経営に取り組む企業では離職率が低い傾向があるというデータもあります。