便潜血検査は見逃しが多い検査?
▶便潜血検査が異常でなかったからといって大腸がんがないとはいえません
実は、進行大腸がんの人は便潜血検査を2日法で受けても2回とも陰性(正常)の人が1割もいます。早期大腸がんにいたっては、便潜血検査が2回とも陰性の人が4割に上ります。便潜血検査は大腸内視鏡に比べると簡単に受けられる検査ですが、その分どうしても大腸がんの見逃しが多い検査です。残念ながら、毎年便潜血検査が正常で、はじめて便潜血検査が異常となった時に大腸内視鏡を受けたら、進行がんが発見されるということは珍しくありません(図1)。
公的な大腸がん検診において、日本では、まだ便潜血検査しか行われておりません。しかし、米国では50歳で大腸内視鏡を直接(便潜血検査を受けずに)受けることができます。大腸内視鏡は便潜血検査に比べると、大腸がんを早期に発見することができます。
さらに、大腸がんになる前のポリープを切除することができ、大腸がんにかかる人や大腸がんでなくなる人を減らすことができます。今から30年前は、大腸がんでなくなる人は、日本は米国より少なかったのですが、今では逆転し、日本の方が多くなっています(図2)。米国の大腸内視鏡・検診が功を奏しているようです。
なぜ大腸内視鏡検査が必要なのか?
▶どこで大腸内視鏡を受けると良いか
大腸内視鏡は胃カメラよりも医師の技術に差がある検査です。そのため、しっかり精度が管理されている病院で内視鏡を受けるとよいです。大腸内視鏡の精度は腺腫発見率という指標で表されます。腺腫とは大腸がんになる前のポリープで、腺腫を大腸がんになる前に切除すると大腸がんを予防することができることがわかっています。
腺腫発見率とは1個以上の大腸腺腫が発見される大腸内視鏡の確率を示します。腺腫発見率が高い内視鏡医は多くの大腸がんを予防し、大腸がんから多くの命を救っていることが知られています。ですから、腺腫発見率をしっかり計測して、その向上に努めている施設で大腸内視鏡を受けるとよいでしょう。腺腫発見率が40%以上の施設が好ましいといわれています。
少し専門的な話となりますが、腺腫発見率を上げるための工夫として、観察時間を十分とること、自身の腺腫発見率を測定すること(Toyoshima O, et al. Endosc Int Open 2021;09:E1032-E1038)、鎮静を適切に行うこと、インジゴカルミンという色素をまくこと、最新の内視鏡機器を使用すること(Toyoshima O, et al. Endosc Int Open 2019;07:E987-E993)、大腸の奥の方の小さくて平なポリープを見逃さないこと(Toyoshima O, et al. Endosc Int Open 2020;08:E775-E782)、などがあげられます。
▶実際の腺腫発見率はどのくらいか
とよしま内視鏡クリニックの腺腫発見率を年代・性別にお示しします(図3)。腺腫は年齢と共に多く発見されるようになります。男性は女性よりも多く腺腫が発見されます。男性は40歳代で4割、50歳以上では7割に腺腫が発見されています。女性は(年齢-10)%で徐々に増加していきます。
▶大腸内視鏡は何歳になったら受けた方がよいか
大腸ポリープの中でがん化するものは腺腫以外に臨床的に重要な鋸歯状ポリープ(clinically significant serrated polyp: CSSP)といわれるポリープがあります。CSSPは約10%の人に発見され、年代であまり差がなく、女性に多く発見されます。腺腫とCSSPは発見されたら切除すべきなのですが、男性は40歳代で、女性は50歳代で約5割の方に、腺腫かCSSPが発見されます。
ですから、男性は40歳になったら、女性は50歳になったら、何も症状がなくても大腸内視鏡を受けた方がよいのです。およそ半分の方に切除すべき大腸ポリープが見つかるからです。また、大腸がんの家族歴のある人は、さらに10歳若くから大腸内視鏡を受けることをお勧めします。
豊島 治
とよしま内視鏡クリニック院長
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