高血圧はなぜ悪い?
血圧が高いと身体にさまざまな影響を及ぼしますが、高血圧だけでは自覚症状がない場合がほとんどです。自覚症状がないまま、心臓や血管への負担が長期間続くことで、動脈硬化が進み脳卒中や心筋梗塞、腎不全などの大きな病気や障害につながっていきます。つまり症状が出たときには遅いのです。
健康診断などで血圧が高めと言われても、まだ体調はなんともないから大丈夫と思うのではなく、すでに血管の老化が加速しており生活習慣の見直しが必要です。
血圧は「高め」な時点で危ない
高血圧は、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上の状態を指します。そのため、血圧が140/90mmHg未満だと、“高血圧”とは診断されません。しかし、血圧が120/80mmHgを超えた場合、さまざまな病気のリスクが高くなることがわかっています。
特に正常高値血圧(120-129/<80mmHgの範囲)、高値血圧(130-139/80-89mmHgの範囲)と呼ばれる状態はリスクが上がるとされているため要注意です。とりわけ、糖尿病や脂質異常症、腎不全など他の病気を合併している場合には、わずかな血圧上昇でもリスクが上がりやすくなります。
血圧が高くなる原因
血圧が高くなる原因には、遺伝的なものと、日々の食事や飲酒、喫煙、運動など生活習慣によるものがあります。二次性高血圧と呼ばれる病的要因や、ストレスや睡眠の質、喫煙や女性ホルモンバランス、季節・環境変化も血圧変動の一因となります。
特に生活習慣による影響は大きく、味の濃い食事を好んだり、運動をまったくしていなかったり、間食が多かったりと、これは成人やご高齢になってからだけではなく、幼少期からの食生活も影響してきます。よって、高血圧にならないためにも早めの生活習慣改善が大事だと言えるでしょう。
もちろん大人になってからでも改善はできますから、高血圧になる前に食事の内容を見直してみたり、運動をしてみたりと取り組むことが大切です。
血圧を下げるには?高血圧の治療方法
高血圧を治療する目的は、高血圧によるさまざまな合併症を予防することです。高血圧の基本的な治療法は、食事療法と運動療法です。しかし、これら2つを行っても血圧の高い状態が続く場合には、血圧を下げたり合併症を予防したりするために薬物療法が併せて検討されます。まず第一に生活習慣を見直していくことから始めましょう。
<生活習慣の改善>
生活習慣を正すことによって血圧を下げる、または高血圧を予防する効果が期待できます。そのため、薬による治療の有無にかかわらず、減塩をはじめとした食事療法、肥満の改善、アルコール制限、適度な運動などが推奨されます。
特に減塩は重要です。日本人の平均塩分摂取量は年々減少傾向にあるものの1日10g程度とされており、推奨されている6g未満の2倍近い値です。ほとんどの日本人は健康の観点からいうと塩分のとりすぎなのです。
こうした生活習慣に対する取り組みは、すぐに結果が出るわけではないため、長く続けるのが難しく感じられるときもあるかもしれません。また、一人ひとりに適した方法が異なりますので、定期的に医師や栄養士などに相談し、アドバイスを受けつつ進めていきましょう。
<薬物療法>
血圧を下げる薬(降圧薬)を服用して血圧をコントロールする薬物療法は、生活習慣の改善だけでは血圧が下がりきらない場合に実施されます。こちらも長期的に服用し続けることが大切ですが、続けるのが難しい、または副作用などで心配なことがあれば医師に相談してみましょう。
高血圧の薬物療法を始めたばかりの方は、焦らないことが大切です。一般的に服用開始から2〜3ヵ月かけてゆっくり血圧を下げていくよう、薬の処方が調整されています。これは、治療薬によって急激に血圧を下げすぎてしまうと、めまいやふらつきなどの症状が出やすくなるからです。服用を始めたばかりの方は、焦らず様子を見ることを心がけましょう。
まとめ
冒頭でも述べたように、高血圧は命に関わる病気の発症リスクを高めたり、さまざまな合併症を引き起こしたりする原因となります。高血圧の具体的な症状がなくても放置せず、まずはできるだけ病気のリスクが低いとされる120/80mmHg未満を目指しましょう。自身の血圧がわからない人は、一度血圧測定や健康診断を受けてみてください。
また、高血圧の治療には、生活習慣を見直し、継続して取り組むことが大切です。高血圧は、適切な治療を続けていけば良い数値まで改善でき、血圧が下がれば、さまざまな病気の発症リスクも抑えられ、健康寿命を延ばすことにもつながります。
生活習慣の改善は一人で根気強く続けるのはなかなか難しく、断念してしまう方も多くいらっしゃいます。そんなときには、医師や看護師、管理栄養士に相談したり、周囲でサポートしてくれる人と一緒に目標に向けた努力を続けてみましょう。
小畑 正孝
医療法人社団ときわ 理事長
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