高齢化による老々相続、各々の権利主張、そして重い税負担・・・。現代の相続には様々な問題が横たわり、その中で、骨肉の争いで泥沼にハマっていく一族もあれば、全員で一致団結して知恵を出し合い、先祖代々の資産を守っていく一族もあります。本連載では、相続対策の第一歩となる「財産の棚卸」について見ていきます。

すべての相続対策のベースとなる「財産の棚卸」

時代背景などを踏まえ、相続でもめ事を起こさないために生前対策が必要です。

 

しかし、相続対策をしなければならないと思っているけれど、どこから手をつければいいのかわらかないという方が大勢います。また、誰に相談すればいいのか、税理士なら誰でもいいのか、相談報酬はいくらぐらいかかるのか。始まる前から悩んで、結局何もしないまま時間がすぎてしまう人も多いことでしょう。

 

相談をするだけなら、いろいろなところで無料相談を行っているので、そちらを活用するのもよい方法です。ただし、相談をするにしても、相談相手に主たる財産の内容を最低限説明しなければなりません。

 

つまり、最初に必要なのはあなたの一家の財産明細です。対策を打つためには現状の財産を把握しなければなりません。そこで、自分の財産が、どこにどれだけあるのかをすべて把握する〝財産の棚卸〞を行うのです。

 

具体的な対策はこの棚卸をした結果を受けて実行していきます。ですので、この棚卸がしっかりできていないと、どんなに緻密な節税対策を進めても最終的に意味がなかったということにもなりかねません。ですから棚卸には、慎重さが必要です。

 

財産の棚卸で財産の明細を作り、その財産を評価して、相続税額を算出し、その結果を受けて対策を講じていくプロセスは大変な手間と時間がかかる作業です。

 

相続を間近に控えている方にはそのように時間をかけることはできないでしょうが、これから相続について考えていく方の場合、そのことを踏まえ、できるだけ早く相続対策に着手することが望まれます。そして、それによって効果も大きく異なってきます。

 

例えば、子どもと孫合わせて5人に毎年100万円ずつ贈与をしたとすると年間500万円です。10年間で5000万円も相続財産を減らすことができると考えればわかりやすいと思います。

配偶者のヘソクリが「争続」のきっかけに!?

では、まず具体的な方法の説明に入る前に、棚卸をしていないことで起こってくる問題から見ていきましょう。

 

相続財産には、正の財産(資産)と負の財産(債務)があります。親のものですから、本人でなければわからない財産があるものです。

 

友人、知人に貸し付けたお金や内緒で投資したお金、株式や債券、趣味の絵画、貴金属、茶器などさまざまなものがあります。それどころか、よそに非嫡出子がいたということもあります。相続が発生すれば、10カ月という限られた時間で申告しなければならないので、とにかく必死に時間をつくっての申告になります。

 

そしてやるだけやったとしても、本人が誰にも言わずに保持していた資産など、気付かない、いや気付けないこともたくさんあるでしょう。資産を多く抱えている方ならなおさらです。

 

相続財産に漏れがあると、相続税の申告後に税務調査で指摘されます。預貯金、有価証券、貸付金、未収入金などなど。隠すつもりはなくても気が付かなかった単純な漏れが出てきます。こんなことは、生前に親が財産の棚卸をしてくれていればどうってことはないはずなのです。

 

税務調査での指摘事項について、もう少し説明しておきましょう。

 

一番多い指摘事項は、実は、配偶者のヘソクリです。生活費を切り詰めてためた配偶者名義の預金を指摘するのです。やりくり上手な方に多い事例です。

 

調査官は、「過去に勤めた経験がない」とか、「実家の相続で預貯金をもらったことがない」とか、「贈与でもらったことがない」と相続人が答えるように質問で誘導し、「それでは結局夫のお金を配偶者名義にしていただけですよね」と締めくくろうとします。

 

子どもたちが自宅を購入した時の資金についても、親の預貯金から出金されている日付と購入日付が結びついている時には、贈与の事実関係を疑われ、質問されます。このようなことについても、棚卸が必要なのです。

 

こういったことが原因で家族間の関係が悪化することもあります。それは、精神的にも経済的にもダメージをもたらすものです。本人の財産については本人が一番わかるはずですから、残される人たちのためにも財産の棚卸は真っ先にしてください。

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続財産を3代先まで残す方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続財産を3代先まで残す方法

相続財産を3代先まで残す方法

廣田 龍介

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢化による老々相続、各々の権利主張、そして重い税負担…。 現代の相続には様々な問題が横たわり、その中で、骨肉の争いで泥沼にハマっていく一族もあれば、全員で一致団結して知恵を出し合い、先祖代々の資産を守っていく…

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