では、祭祀財産は、上記のような方法で承継されていくものなのでしょうか。結論から言うと、答えはノーです。民法897条では、祭祀財産は相続財産に含まれず、祭祀を主宰すべき者が承継することと定められております。
よって、祭祀財産は、現金や預貯金、不動産などの相続財産とは別の方法で承継されていくものとなります。
祭祀承継者の権限・役割とは
祭祀承継者は、祭祀財産を取得し、祭祀(先祖を偲ぶ行事:年忌法要など)を主宰していくことになりますが、祭祀を行うこと自体を、義務付けられているということではなく、祭祀を行うかどうかなどを、自由に決定することができます。
これについて、家族や親族などの状況や関係性によりますが、祭祀承継者が祭祀を行うかどうかの決定をする場合、その祭祀に関係する家族や親族などと、上手くコミュニケーションを取っていくことが重要です。
例えば故人の年忌法要の場合、行う日時や場所、法要後の会食などの有無、お供え物の用意など、様々な準備・決定をしていくことが考えられます。場所については、自宅や菩提寺、法要などを執り行える会館などが挙げられますが、集まる人数や、立地条件、金銭的な条件などにより、集まる家族や親族がストレスの少ない場所を選ぶことが求められます。
また、現在は、家族や親族内の各人が離れて暮らしていることも多く、その場合、遠方から来る人にとって、無理のない日時や場所を選ぶことも求められます。そのような人が多い場合、週末の休みの日に設定したり、駅から近い場所や、駐車スペースが確保されている場所などを選ぶことも求められるでしょう。
コロナ禍において、オンラインを活用した法要の形も出来てきました。そのような方法も、選択肢として考える機会は増えてくるでしょうし、菩提寺の本堂などを使用する場合も含め、どの場所で、どのような方法・形式で行うにしても、多くの場合、菩提寺の僧侶も関係してくることでもあるので、菩提寺とのコミュニケーションも大事なことと考えられます。
もちろん、祭祀承継者の想いや環境などにより、祭祀を行わないという決定をすることもあるでしょう。その場合も、可能な範囲で親族などに、その旨を伝えることも重要なポイントと言えるでしょう。
また、祭祀承継者の役割として、承継した祭祀財産の管理などが求められますが、具体的には、お墓や仏壇、神棚、遺骨などの維持管理や、先述した通り、祭祀の主宰や、檀家(宗派によっては門徒・信徒)としての務めということが挙げられます。
遺骨の管理として注意すべき点は、その遺骨がどこに保管されているかということです。例えば、遺骨がお墓や納骨堂などに納められている場合です。そのような場所にはほとんどの場合、管理者が定められていますが、故人がその墓地や納骨堂の使用権を持っている人だった場合、祭祀承継者は、相続が発生し、使用権を承継する旨を、その管理者に伝えていく必要があります。
納骨場所により、その承継方法も様々ですので、まずは管理者に相談してみることをおすすめします。また、忘れてはならないのが、そのような納骨先には、維持管理費が発生する場合が多く、その支払い義務も承継されていくので、注意が必要です。