(※写真はイメージです/PIXTA)

長期にわたりデフレが継続していた日本ですが、ここ最近、いよいよインフレの気配が感じられるようになりました。今後の状況はまだ分かりませんが、ひとつ明確にいえるのは、大切な資産を守るには、日本円の預金一辺倒では危険すぎるということです。分散投資の重要性について、経済評論家の塚崎公義氏が平易に解説します。

リッチな老後を目指すより、惨めな老後を回避せよ

老後資金を増やしてリッチな老後を送ろう、と考えている人は多いでしょうが、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」といわれるように、儲けようと思えばリスクを覚悟する必要があります。

 

リッチな老後を目指して投資をしたら失敗して惨めな老後を送ることになった、というのでは目も当てられません。そこで筆者は、リッチな老後を目指すことよりも惨めな老後を避けることを重視すべきだと考えています。

 

「それなら簡単だ。老後資金をすべて銀行預金で持てばいいのだ」と考える人は多いと思いますが、銀行預金はインフレに弱いリスク資産なので、全額を銀行預金で持つのはむしろ危険なことなのです。銀行預金、株、外貨に資産を分散させておいた方が安全なのです。

老後資金が「減る」のと「なくなる」のでは大違い

筆者がお勧めするのは、分散投資です。銀行預金はインフレに弱く、株と外貨は値下がりリスクがあるので、どれかひとつだけを持っていると酷い目に遭う可能性がありますが、分散しておけば、酷い目に会う確率は下がるはずですから。

 

「すべての卵をひとつのカゴに入れるな」という言葉があります。分散投資を薦める言葉ですね。2つのカゴに分けて両手で持てば、片方落としても半分は残るので、全滅の可能性が大きく下がるわけです。多くのカゴに分けて大勢で持てば、さらに下がります。

 

ここで重要なのは、食べられる卵の個数の期待値は変わらない、ということです。全部割れてしまう可能性は減りますが、同時に全部食べられる可能性も減ってしまうからです。

 

それでもカゴを分けるのは、卵が1個もないのと1個でもあるのは満足度が大違いだが、10個あるのと20個あるのとは満足度にそれほど差がないからです。

 

老後資金が半分に減っても、イマイチな食事と狭い家で我慢すればすみますが、なくなってしまうと本当に悲惨なので「半分になってもいいから、なくなってしまうことだけは避けたい」というのが基本的な考え方なわけですね。

 

もちろん、本当にゼロになるわけではないでしょうが、各自が許容できる最低限度の生活レベルを下回らない、といった意味でご理解ください。

似たような種類の資産に分散しても、意味がないので…

卵のカゴを分けても、同じ手に持っていては意味がありませんから、両手で1個ずつ持つべきです。さらにいえば、同じ人が持つより違う人が持ったほうが安全です。

 

資産運用も、それと似ています。同じようなものを何種類も持っていたとしても、あまり意味はありません。たとえば輸出企業の株を100銘柄持っていたとしても、円高になってすべての輸出企業が赤字になってしまうリスクがありますから。

 

その意味では、反対の動きをするものが望ましいですね。円高で利益が増える(円安で利益が減る)企業と円高で利益が減る(円安で利益が増える)企業の株を持っておけば、比較的安心でしょう。

 

そもそもなぜ株を持つべきか、といえば、株はインフレに強いので、インフレに弱い銀行預金と組み合わせて持つと安心だからです。預金は、減りませんし、銀行が倒産しても1000万円までの預金は政府が保証してくれますから、安心です。しかし、インフレになると、目減りしてしまう(同じ預金金額で買える物が減ってしまう)ので、老後の生活に支障をきたしかねないのです。

 

そこで、インフレになっても困らないように、インフレに強い資産を持とう、というわけですね。もちろん、インフレになって株価もドルも値下がりする、という可能性はゼロではありませんが、それは大勢がカゴをひとつずつ持っても全員が転んでしまうリスクがゼロでないのと同じですね。

 

ちなみに、インフレなど来ないと思っている人も多いでしょうが、筆者は心配しています。少子高齢化による労働力不足で賃金が上がってインフレになる可能性も心配ですが、南海トラフ大地震で大都会が壊滅的な被害に遭い、復興資材や食料等々の価格が高騰するリスクについても備えておく必要があるからです。

 

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