(※写真はイメージです/PIXTA)

政府が国民への自発的な資産形成を促すために用意した制度「NISA」と「iDeCo」ですが、これには税制上の優遇措置が設けられています。一見しただけではわかりにくいかもしれませんが、さまざまなメリットがあるため、ぜひ最大限活用してみましょう。具体的な内容と留意点について、経済評論家の塚崎公義氏が平易に解説します。

「NISA」と「iDeCo」の使い分けを考えよう

以上のように、NISAとiDeCoは、どちらも投資する際に税法上のメリットが受けられるわけです。どちらも上限が決まっているので、富裕層は両方とも限度額いっぱいまで利用すればいいのですが、庶民はどのように使い分けたらよいのでしょうか。

 

サラリーマンなら「iDeCoを優先的に使い、資金に余裕がある場合にはNISAも使う」ということでいいと思います。掛け金の所得控除のメリットも目一杯活用すべきだからです。

 

一方、浮き沈みの激しい自営業者などは、資金繰りをよく考える必要があるでしょう。60歳まで引き出せないので、「あと100万年あれば倒産を免れたのに」といった目に遭う可能性があるからです。所得控除のメリットに目が眩んで欲張りすぎないように、慎重に掛け金の額を検討しましょう。

 

もちろん、サラリーマンでも払い出し制限を受けたくないという場合は、NISAを使えばいいでしょう。「節税メリットより安心を選ぶ」という選択も、当然ありますから。

「平均税率より限界税率が高い」の意味を理解しよう

所得控除というのは「所得税や住民税を計算するときに、所得の金額を少なく計算していい」ということです。普通の投資は、所得から所得税や住民税を支払った残りを使っておこなうのですが、iDeCoの投資はそうではない、というわけですね。

 

これは、結構大きなメリットなのですが、それを実感していない人が多いようです。それは、所得税が累進課税になっているからです。給与明細で所得税額を見て、それを所得額で割ると、税率が出ます。たとえば税率が10%としたら、掛け金の10%分の税金が得になった、と考えるのが普通でしょう。しかし、違うのです。

 

累進課税というのは、所得が増えていくと税率が上がっていくという仕組みです。したがって、最初は所得の10%が税金だったのに、所得が増えていくと、あるときから突然「あと1万円所得が増えると、あと2,000円税金が増える」といわれるわけですね。

 

反対に、そんなときにiDeCoによって1万円の所得控除が受けられると、税金が2,000円減ることになります。そのときに、給与明細を見ると、所得の10%しか所得税をとられていないように感じるわけですが、iDeCoのメリットはそれより大きい、というわけです。

 

これを難しい言葉で「平均税率よりも限界税率のほうが高い」といいます。難しい言葉はともかくとして、所得控除のメリットは意外と大きそうだ、ということをご理解いただければ十分なのですが、一応解説しておきます。

 

限界税率というのは、所得が1万円増えたときに税金が何円増えるか、という割り算の結果のことです。平均税率というのは、所得全体と税額全体を割り算した結果のことです。

 

そして、限界税率が平均税率より高いというのは、給与明細を見て税額を所得額で割り、「自分の税率は低いからiDeCoをやってもメリットは少ない」と感じるのは間違いかもしれない、ということを意味しているのです。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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