(※写真はイメージです/PIXTA)

中高年ばかりか、若年層までもが不安を感じている「老後資金の問題」。毎日の生活がいっぱいいっぱい、給料が余ったら、給料が上がったら、それを預貯金にするしかない…。もし読者がそんな考え方を持っていたなら、いざというとき大変な思いをする可能性が高いといえます。経済評論家の塚崎公義氏が、効率的な老後資金の形成の方法を解説します。

気持ち・行動を縛って、自分自身に「目的達成」を強制

ダイエットを成功させるために「周囲へ宣言してしまう」という方法があります。「ダイエットします」と宣言すれば、皆が面白がって「やせた?」とたびたび聞いてくれるでしょう。「また食べちゃった」とは答えにくいので、仕方なく食べるのを我慢する、ということで自分を縛るわけですね。

 

「お金を貯めます」と宣言してしまう手もありますが、本稿では、別の方法を考えましょう。強盗が聞きつけてやって来るといけませんから(笑)。

 

たとえば、社内預金や財形貯蓄も有効です。引き出すときには人事課に願出書を提出しなければならないので、チョッと恥ずかしいですね。その感情を利用するのです。

 

住宅財形であれば、途中解約しない限り利子が非課税なので、「もったいない」という感情が途中解約を思い止まらせてくれる、というメリットも期待できるでしょう。現在は銀行預金等の金利がほぼゼロなので、非課税のメリットを失ってもたいしたことはないのですが、気持ちの問題というのはやはり大きいはずです。

 

面倒臭い、という意味では、帰省した時に親の家の近くの地域金融機関に定期預金を預けてしまう、といった工夫も有益かもしれません。ついでに通帳を親に預けておけば、恥ずかしいというストッパーも同時に働いてくれるかもしれませんね。

iDeCoが60歳まで引き出せないのは「政府の親心」

iDeCo(個人型確定拠出年金)という制度があります。税制上の優遇措置で、ぜひ検討すべきだと思いますので、別の機会に詳述します。

 

本稿が注目するのは、60歳になるまで引き出せない、というiDeCoの特徴です。これをiDeCoの欠点と捉える人も多いのですが、「意思の弱い人が老後資金を途中で引き出したりしないように」と、政府が親心で設けた制度なので、ありがたく利用すべきでしょう。

 

もっとも、個人事業主で、浮き沈みが激しい人は、避けておいた方が無難かもしれません。「あと100万円あれば倒産を免れたのに」といった目に遭う可能性があるからです。サラリーマンにはそういう可能性がなさそうですから、ぜひ検討しましょう。

「住宅ローンを借りてしまう」という手もある

自分の意思が弱いから他人に縛ってもらう、という意味では最強なのが「住宅ローンを借りて家を買ってしまう」という選択肢でしょう。

 

「借家か、持ち家か」という議論は、通常は損得の観点から論じられるのですが、筆者は別の観点から論じています。ひとつは老後のリスクの軽減、もうひとつは強制貯蓄効果です。

 

老後、長生きしている間にインフレが来るリスクを考えると、老後に家賃を払い続ける借家住まいはおすすめできない、ということなのですが、「老後になってから家を買おう」と思っていても、金が溜まっていなくて買えない、というリスクも考えておく必要があるでしょう。

 

現役時代に、給料から生活費を払い、老後のための貯えをしっかり行い、加えて住宅購入資金もしっかり貯める、というのは大変強い意思を必要とすることですから。

 

その点、若いときに住宅ローンを借りて家を買ってしまえば安心です。銀行が強制的に毎月の返済額を回収してくれるので、残った金で生活するしか選択肢がなく、つい贅沢をしてしまうという可能性が消えるからです。強制的に取り立ててくれる銀行に感謝です(笑)。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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