なぜ米国の超富裕層は「不動産保有」に執着するのか?

米国で超富裕層を相手に活躍する税理弁護士から学ぶ、資産防衛策のヒント。今回のテーマは「なぜ米国の超富裕層は不動産保有に執着するのか」。その理由を紐解いていくと、米国不動産にまつわる「税金のカラクリ」がありました。

アメリカンドリーム=不動産を保有すること

日本の皆さんこんにちは、ジェラルド・ノウォトニーです。

 

今回はは米国に移民がくる大きな理由の一つである「アメリカンドリーム」の重大な要素である「米国不動産」について、「なぜ米国人はこれほど家を所有することにこだわるか」についてお話ししたいと思います。

 

まず、これは多くの税務の専門家が話すことではありますが、「米国の不動産に対する税務や融資の優遇」は、他の資産と比べ物にならないほどのものです。

 

日本でも直近では「米国の不動産は利上げにより不動産価格が来年から下がる」という見方が報道されていますが、もちろん金利上昇は米国に限らず不動産にとってはマイナスです。ただ、米国不動産は現在「とても堅調な労働市場(失業率3.5%)」「ミレニアル世代が家を買う年齢になってからの慢性的な供給不足」「9割を超える固定金利の住宅ローン」から、とても強靭な土台に支えられている状態です。

 

実際この数ヵ月の動きを見ていると、売り手は今売る必要がないと売り控え、数週間して希望の値段で売れない場合は市場から取り下げる場合が多く見られています。一方で、買い手は、今の金利でローン審査に通らないか、今ローンを借りて来年以降金利が低くなった時に再融資をすれば良いと考えているので、まだまだ売り手市場であると言われています。

 

これらの要素や市況に追加して不動産がいかに米国で税制優遇されるかについて、米国人が不動産で財を作る王道を以下の3点でお伝えしていきます。

 

(1)特殊な不動産事業主ステータスであるReal estate professionalについて

(2)譲渡益を半永久的に繰延られる1031Exchange

(3)相続する際に時価で相続できるStep up basis

特殊な不動産事業主ステータス

まずは(1)について。あまり日本の方には知られていませんが、米国の税務申告表には、とても特殊なステータスが存在します。それは「Real Estate Professional」という職務です。

 

米国にはActive(能動的)とPassive(受動的)という2種類の収入があり、この2つは相殺できません。Active収入は給与所得やフリーランス収入などといった、実際に労働時間を費やして稼いだ収入のことを指します。一方でPassive収入は、賃料やロイヤルティ収入、利子、配当収入などが計上されます。普通に不動産を保有していて減価償却で大幅に赤字になっていても、Passive収入に対して相殺はできますが、Active収入に対しては相殺できないのです。

 

ただ唯一例外があり、それが「Real estate professional」という特殊なステータスです。このReal estate professionalに限ってはActive収入に対してPassiveの赤字を当てることが可能です。

 

このステータスとして申告するには厳しいルールがある代わりに、特に資格などは必要としません。ルールは「①すべての取引または事業で行った個人的なサービスの半分以上が、自分が『Material participation』に該当する不動産関連の取引、または事業で行われたものであること」「②750時間以上、自分が『Material participation』した不動産関連の業務、事業に従事していること」「③他の業務、事業も行っている場合は、全労働時間の半分以上の時間を費やしていること」というもの。

 

ここで混乱が生じやすいのが「material participation」の部分です。この部分が実はとても重要なのですが、不動産ブローカーであったり、プロパティマネージャーであったりと、W2 employeeの場合は基本的に労働時間として換算されません。他の会社に雇ってもらっている立場であれば、雇い主の株式の5%以上を保有していなくてはいけないというルールもあり、一概に不動産事業に従事しているからと言って「Real Estate Professional」になれるというわけではないのです。つまり基本的には自身が所有している物件などに一定以上の時間を費やす必要があります。

 

このルールは一見「専業大家か自由業しか使えなさそう」と思われるでしょう。ただこのルールには大きな抜け道があります。それは「夫婦間でActive収入とPassive赤字を相殺できる」ということ。もし夫婦でともに税務申告をしている場合は、夫婦の片方が不動産事業主のステータスを持ち、片方が上記の条件を満たしていれば、夫婦間での相殺が可能となるのです。

 

たとえば夫婦の一方が給与所得(W2)で年間$300,000(~4,400万円)の収入を得て、もう一方が十分な不動産を保有しPassive収入がマイナス$100,000となる場合、給与所得から基礎控除以上の部分でも$100,000の控除が受けられることになります。この部分の課税率が30%の場合は$30,000分の節税となります。

 

米国では一般的には減価償却は築年数が何年経とうと木造建物に対して27.5年の償却年数で減価償却がされます。しかし2017年の法改定により、2022年までは建物の設備を建物から切り離して、1年目に償却が可能です。設備は大体物件の20~30%なので、年間$100,000の減価償却に必要な物件価格はそこまで高くはありません。

 

2022年以降は設備の償却が80%、60%……と段階的にフェーズアウトしていきます。ただこの部分はあくまで減価償却による赤字から節税をしているので、この減価償却部分は売却時に課税されるはずです。ただ米国では不動産を売却しても課税を先延ばしにする方法があります、それが1031Exchangeです。

 

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    米国・税務弁護士

    パナマ出身、米国陸軍士官学校卒業後米国陸軍で大尉を務める。その後マイアミ大学にて税務の法学博士、遺産相続の修士を取得しフロリダ州弁護士協会の会員。以降デロイト、マスミューチュアルなどの保険会社にて米国の超富裕層の税務プランニングに従事し2004年に独立。現在同時にBlue Ridge Investmentsの税務アドバイザーを務める。Chartered Life Underwriter (CLU®), Chartered Financial Consultant (ChFC®) and CERTIFIED FINANCIAL PLANNER™の資格を持つ。

    サイト: blueridgeinvestments.org
    メール:info@blueridgeinvestments.org

    著者紹介

    連載米国・超富裕層から学ぶ「資産防衛のヒント」

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