(※画像はイメージです/PIXTA)

「DX投資促進税制」の期限が2023年3月に迫っています。「日本企業がDXを推進しなければ、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる」とされる「2025年の崖」に対処するため、2021年度の税制改正により導入された税制措置です。本記事では、「DX投資促進税制」の概要について解説します。

DX投資促進税制の適用要件

DX投資促進税制の対象となる事業者は、青色申告書を提出する法人で、認定を受けた事業者です。

 

認定を受けるには、「デジタル要件(D要件)」「企業変革要件(X要件)」をいずれもみたす必要があります。以下、それぞれについて説明します。

 

◆デジタル要件(D要件)

デジタル要件は以下の通りです。

 

・データ連携・共有

・クラウド技術の活用

・情報処理推進機構(IPA)の「DX認定」

 

「データ連携・共有」は、以下のデータと既存の内部データとを合わせて連携し、有効活用することをさします。

 

・グループ内外の事業者・個人の有するデータ

・センサー等を利用して新たに取得するデータ

 

これらを行うために、「クラウド技術の活用」を行わなければならないということです。

 

また、「情報処理推進機構(IPA)の『DX認定』」は、「レガシー回避」と、サイバーセキュリティの確保の見地から要求されています。「レガシー」とは、過去の技術で構築されている機動性・汎用性に欠けたシステムをさします。外部とのデータの連携・共有をする場合にそういったものが阻害要因になるので、回避しなければならないということです。

 

◆企業変革要件(X要件)

次に、企業変革要件(X要件)の主なものは以下の通りです。

 

1. 計画の実施期間が5年以内であること

2. 全社の意思決定に基づくこと

3. 一定以上の生産性向上等の効果が見込まれること

4. 財務の健全性

5. 前向きな取り組みを行うこと

 

【X要件1】計画の実施期間が5年以内であること

情報技術事業適応に関する計画(事業適応計画)の実施期間が5年以内であることが必要です。

 

【X要件2】全社の意思決定

「全社の意思決定」は、一部門・一事業拠点でなく、組織全体としての意思決定でなければならないということです。株式会社であれば、取締役会決議あるいはこれに準じるものです。

 

たとえば、オーナー企業で取締役会を設置していない場合は、株主総会決議が必要となると考えられます。

 

【X要件3】一定以上の生産性向上等の効果が見込まれること

「一定以上の生産性向上等の効果が見込まれること」については、以下のいずれかが見込まれることが必要です。

 

・生産性向上:総資産利益率(ROA)が2014年~2018年の平均より+1.5%ポイント以上向上

・新需要の開拓:売上高伸び率が過去5年度の業種売上高伸び率より+5%以上向上

 

【X要件4】財務の健全性

「財務の健全性」とは、計画の終了年度において以下の2つの数値の達成が見込まれることです。

 

・有利子負債/CF≦10

・経常収入>経常支出

 

【X要件5】前向きな取り組み

「前向きな取り組み」は、以下(1)~(3)のいずれかの類型に応じ、それぞれの指標をみたすための取り組みを行うことをさします。

 

(1)新商品、新サービスの生産・提供⇒投資額に対する新商品等の収益の割合が10倍以上

(2)商品の新生産方式の導入・設備の能率の向上⇒商品等1単位当たりの製造原価等を8.8%以上削減

(3)商品の新販売方式の導入・サービスの新提供方式の導入⇒商品等1単位当たりの販売費等を8.8%以上削減

 

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