(※写真はイメージです/PIXTA)

60代のうち「金融資産がない」人たちはおよそ5人に1人。公的年金も頼りないなか、病気や介護が発生すれば、立ち行かなくなってしまう。60代の自営業の男性の事例を取り上げながら、現状を見ていく。

〈金融資産保有世帯〉の60代、平均貯金額3,014万円

金融広報中央委員会の「知るぽると」が公開しているデータのうち、家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)の「各種分類別データ(令和3年)」によると、〈金融資産保有世帯〉の世帯主が60歳代の金融資産保有額の平均額は3,014万円、中央値は1,400万円だった。また、70歳代の金融資産保有額の平均値は2,720万円、中央値は1,500万円となっている。

 

一方、同調査の、〈金融資産を保有していない世帯〉を含むデータにおいては、世帯主が60歳代の家計における金融資産保有額の平均額は2,427万円、中央値は810万円。70歳代の場合、平均額は2,209万円、中央値は1,000万円だった。

 

〈金融資産を保有していない世帯〉を含むデータについて、60歳代の金融資産を「非保有、100万円未満、100万円~200万円…」と金額ごとに区分して該当者を集計すると、下記のような割合となる。

 

金融資産保有世帯の金融資産保有額(60歳代)

金融資産非保有……………19.0%
100万円未満………………6.4%
100万~200万円 …………4.8%
200万~300万円 …………3.4%
300万~400万円 …………3.3%
400万~500万円 …………2.6%
500万~700万円 …………5.9%
700万~1,000万円 ………5.3%
1,000万~1,500万円 ……8.4%
1,500万~2,000万円 ……6.0%
2,000万~3,000万円…… 9.6%
3,000万円以上 ……………22.8%
無回答 ………………………2.6%

出所:知るぽると「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)」

 

なお、〈金融資産保有世帯〉の金融資産保有額の平均値について、60代と70歳代を比較しても、そこまで金額の幅は大きくなく、中央値においては「1,400万円→1,500万円」と100万円金額が高くなっていることからみて、それなりの資産を保有しつつ「使わずに過ごしている」姿が浮かび上がってくる。

 

一方、上記の「金融資産保有世帯の金融資産保有額(60歳代)」の一覧にもある通り、金融資産非保有は19%。つまり、日本人の5人に1人は、万一の際に頼れる金融資産が「なにもない」状態にあるということだ。

転職→独立→廃業→自営業…綱渡り生活の60代の例

「金融資産がなにもない」という、60歳のフリーライターの男性に話を聞いた。

 

大学卒業後、理工学系の専門書を出す小規模な出版社に就職したが、その後、30歳で編集プロダクションに転職。緻密な仕事ぶりが評価され、大手版元から指名で仕事が来るようになり、評価も給料も上がった。これほどまでに仕事が来るのなら、独立した方がメリットが大きいと考えて独立した。

 

独立後しばらくは、数名のアシスタントを雇うほど繁盛していたという。しかし、年数を経るうちに、大手版元の担当者たちも定年退職や業界外に転職するなどして疎遠に。営業に精を出すが手ごたえが得られず、しばらくは無理をして都内の事務所を維持していたものの、ついに立ち行かなくなり、50代で事務所をたたんでフリーライターになった。

 

「事務所が繁盛していたとき、フリーライターとして知り合ったいまの妻と結婚しました。忙しさにかまけ、事務所の運営も自分の家庭の家計もかなりのどんぶり勘定で、あまり預貯金が作れませんでした。仕事が減ったときにすぐ見切りをつければよかったのですが、狭いワンルームとはいえ、渋谷の事務所を手放すのが惜しく、しばらく無理をしたのが悪かったですね」

 

事務所の維持にかなりの資金をつぎ込んでしまったという。

 

「うちは子どもがいないので、自宅アパートで夫婦2人、自営業をしてなんとかギリギリ生活を維持していますが、常に自転車操業です。もしどちらかが倒れたら、正直、家計は回りませんよ。いつまで無事に生活できるのか…」

 

ところが、最近新たな不安が生じてきたという。

 

「関西にいる妻の70代の母親が、認知症の診断を受けたそうです。いまはまだひとりでどうにかなっていますが、これからのことを思うと本当に頭が痛い。呼び寄せるにしろ、施設に入れるにしろ、とにかく先立つものがなければどうにもなりません」

 

金融資産を潤沢に蓄えている人がいる一方、真面目に働いていたはずが、60代になっても「自転車操業」で生活せざるを得ない人も一定数いる。本人が健康ならどうにかなっても、自身や配偶者の病気、親の介護等によって「決壊するリスク」とは常に隣りあわせだ。

 

仕事をしているときは、目の前のことに夢中になってしまうかもしれないが、その先にある「自分の老後」をしっかり見据え、計画的に行動することが、何より重要だといえるだろう。

 

※ケース例はプライバシーに配慮し、一部変更している部分があります。

 

 

幻冬舎ゴールドオンライン編集部

 

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