少子高齢化による労働力不足で「インフレ」に
少子高齢化は、労働力不足をもたらします。労働力不足になれば、賃金が上がりますから、その分が価格に転嫁され、インフレになるわけです。
新型コロナ前には労働力不足で非正規労働者の時給が上昇していました。新型コロナ後には、再び非正規労働者の時給が上昇するでしょうから、息の長い緩やかなインフレが続く可能性が高いと考えています。
インフレ率が2%を超えなければゼロ金利が続くので、心配ない、という考え方もありますが、上がるかもしれないから「保険」に入ろう、という発想も重要だと思います。
非正規の給料は上がっても、正社員は上がらない!?
労働力不足で賃金が上がるなら、支払い金利が増えても大丈夫だ、と考えている人もいるでしょうが、そうではないかもしれません。理由は2つ。ひとつは、上がるのは非正規労働者の時給だけで、正社員の給料は上がらないかもしれないからです。もうひとつは、給料が1%上がる間に、支払い金利が何倍にもなるかもしれないからです。
非正規労働者の時給は、労働力の需給を反映します。時給を上げないと必要な労働力が集まりませんし、いま雇っている非正規労働者が他社に引き抜かれてしまうかもしれないからです。
しかし、正社員は終身雇用制ですから、正社員の給料は労働力の需給をほとんど反映しないと考えてよいでしょう。まあ、企業も正社員が生活できないと困りますから、インフレになれば少しは給料も上げてくれるでしょうが、過大な期待は禁物です。
より重要なのは、支払い金利の増え方です。いまはインフレ率が0%、給料の昇給も0%、借入金利が1%だとしましょう。インフレ率が3%、昇給も3%、支払い金利も3%になったとします。わずか2%の上昇のように見えますが、実際に支払う金利の額は3倍になるわけです。賃金は3%しか上がらないのに。
「超インフレに備えた保険料」だと思えば安いもの
南海トラフ大地震が来て、大都市が壊滅的な打撃を受けたとします。復興資材の輸入によってドルが値上がりし、輸入品の値段がすべて高騰するでしょう。激しいインフレになり、激しい金融引き締めが行われ、金利は極めて高い水準まで上昇するかもしれません。
たとえば金利が10%になったら、借入元本の10%を金利として払う必要があるわけで、これは到底不可能でしょうね。
世の中の金利がどれほど上がっても、固定金利で借りていれば関係ありませんから、淡々と元本を返済して金利を支払うことができるはずです。そのための保険料だと考えれば、固定金利が変動金利より多少高くても、納得ですよね。
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塚崎 公義
経済評論家
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