経済低迷&超高齢社会…日本に蔓延する「老後不安」
景気低迷、歴史的円安、そして少子化・超高齢化による日本の国力低下への懸念…。日本全体に蔓延する「将来不安」を解消すべく、国民の多くが節約に走り、資産形成に注力している。
金融広報中央委員会の2021年の『家計の金融行動に関する世論調査』によれば、「老後が心配」と答えたのは84.5%。リーマンショック下の2009年には91.0%だったから、その時点から考えるなら、老後不安は改善傾向なのだろう。ところが、30年前の1992年に老後不安があると回答した人は63.7%。当時、3割強の人は老後不安を抱いていなかった。
1992年から現在までにおける「不安を喚起する事象」といえば、言うまでもなく日本経済の凋落だ。それに伴い、老後不安も加速したということだろう。同時に、高齢化の加速度的な進展で社会保障等の負担が増大したことも、老後不安を増大させた大きな要因だと推察できる。
1990年代前半、日本の高齢化率は12%程度だった。それが2000年には17%、2010年には23%、2021年には29.1%と30%超えも時間の問題で、2040年には35%に達するとの試算もある。これだけ短期間に高齢化が進展すれば「年金だけで老後を生きていくことは難しい」のは、ゆるぎない事実だといえる。
厚生労働省の『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金受給者の平均受取額は月額5万6,358円、厚生年金受給者の平均受取額月額14万6,145円だ。自営業の夫婦なら年金は10万~12万円程度、会社員+専業主婦なら20万~22万円程度、会社員同士の夫婦なら28万~30万円程度となる計算である。
一方、老後夫婦二人の月の支出の平均値は23万~26万円だ。会社員+専業主婦という一般的なモデルケースでは月に3万~5万円程度の赤字が見込まれる。この状況で老後が30年続くと仮定すると、1,000万~2,000万円程度の貯蓄が必須となり、これが世間にいうところの「老後資金2,000万円問題」の論拠となっている。
このシミュレーションが周知されたからか、前出の調査でも「貯蓄の目標額は2,000万円」との回答が続出している。だが、逆にいうなら「老後のための貯蓄が2,000万円あればセーフ」と考えられているともいえる。
2,000万円に含まれていない「重要な費用」とは?
人生はシミュレーション通りにいくとは限らない。「2,000万円あればセーフ」というシミュレーションは「30年間健康に暮らす」ことを想定しており、医療や介護の費用については加味されていない。
厚生労働省『令和2年度 介護保険事業状況報告(年報)』によると、2020年前期高齢者(65~75歳未満)は1,756万人、後期高齢者(75歳以上)は1,833万人、合計で3,589万人。日本にはこれだけの高齢者が存在している。
また、要介護(要支援)認定者数は、2021年3月末時点で682万人。第1号被保険者に占める要介護(要支援)認定者の割合は18.7%。さらにサービス受給者数は月に575万人。高齢者の5人に1人程度は程度の差こそあれ介護が必要であり、6人に1人程度が実際に介護サービスを利用している。
施設介護サービス受給者は、2020年度累計で1,148万人。1ヵ月あたり平均で、介護老人福祉施設が56万人、介護老人保健施設が35万人、介護療養型医療施設が1.8万人、介護医療院が3.2万人、総数96万人だ。
この数字を見る限り「老後30年健康に生活する」という大前提では、老後の備えは不十分となる可能性が高い。
たとえば老人ホームへの入居費用だ。終身利用する権利を取得する目的に対し支払う「一時入居金」と「月額費用」があるが、一時入居金は施設によって大きく異なり、0円~数百万円、数千万円といったところもある。月額費用には「家賃」「管理費」「食費」「介護保険サービスの自己負担分など」「個人で支払う費用」が含まれ、10万~30万円程度の施設が多い。
また、月額利用料だけで判断してしまうと、思わぬ出費に驚愕することになる。食事代は別契約で月額費用に含まれない、介護保険の1割負担分が含まれないなど、施設ごとに表記方法はバラバラなのだ。検討段階できちんと精査・確認しないと、表記を大きく上回る請求が来るケースもあり、トラブルになる場合もある。
老人ホームの平均入居期間は1.5~4年程度といわれるが、なかには10年を超えて入居するケースもある。「老後は2,000万円程度あれば大丈夫だろう」という想定には、介護等が必要になったときの費用は含まれていない。老後の精神安定のためにも、老後資産として最低限の準備額ともいえる2,000万円にプラスαを目指すことが大切だろう。
幻冬舎ゴールドオンライン編集部
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