借金を重ねてまで買い物を繰り返した妻
あの頃の私は、本当にどうかしていました。
公務員の夫と結婚してすぐに子どもができたため、私は辞めたくなかった仕事を辞めました。子育てで忙しい日々が続き、それがようやく少し落ち着いたと思ったところで、二人目を授かったのです。
子どもたちはとても可愛かったのですが、二人が小学生になったころ、その生活がずっと続くことに疑問を感じました。一緒に仕事を始めた同期たちは、まだ独身で自分の思うように暮らしています。好きな所へ遊びに行って、好きなものを買って、好きなものを食べているのです。
そんな思いが、私を買い物に走らせました。私だって家事や育児という「仕事」をしている。同じように好きなものにお金を使ってもいいはずだ、と思ったのです。
欲しいものを買うという行為は、欲しいものをただ持つということ以上に、私の気持ちをすっきりさせました。買うことが目的ですから、家には使っていないブランド物のバッグや化粧品が溜まっていきます。カードも限度額を使い切り、借金を重ねました。家に届いた督促状の数だけ夫と喧嘩をしました。子どもたちのためにもこんなことは止めなければいけないと思いましたが、どうしても買い物の誘惑には勝てなかったのです。
夫の働く役所に借金取りが行ったとき、夫から離婚を切り出されました。
彼は「これから先の子どもたちのことが心配だ」と言いました。同じ思いだった私は、愛する子どもたちのために、子どもたちから離れることを決めたのです。
一人で生活するようになって、お金の大切さを身をもって知りました。借金はすべて元夫が清算してくれていたのですが、私自身には何の保証もないため、カードも作れなければ、お金を貸してくれる人もいません。ようやく見つけた仕事にしがみつき、日々の暮らしのためだけにお金を使いました。当然、前のような買い物はできませんでした。
ただ、買い物ができないことは思ったより辛くありませんでした。何よりも辛かったのは子どもたちに会えないことでした。誰もいない小さな部屋で、何度も何度も子どもたちの名前を呼びました。
そんな一人の暮らしに慣れないまま数ヵ月がたったとき、元夫が事故で死んだという報せが届きました。あまりにも突然のことで、頭と心の整理がまったくできませんでしたが、何をおいても子どもたちのもとに駆け付けなければならないと思いました。
親戚やご近所の人からは後ろ指をさされるかもしれません。それでも、そんなことは一切気になりませんでした。