(写真はイメージです/PIXTA)

9月のグローバルマーケットでは、米国の金利急騰により債券価格が下落、楽観論は崩れ、米国債をはじめ、債券に投資していた投資家は軒並み被害を受けました。そのようななか、株式会社武者リサーチの代表である武者陵司氏は、いまこそポートフォリオの主軸に「日本株式」を検討するタイミングだといいます。それはなぜか、みていきましょう。

予想される日本国債大幅下落…YCC解除は時間の問題

このように欧米の金利急騰が波乱を引き起こしているが、金利リスクとなればまず懸念されるのが、今はYCC(イールドカーブコントロール)で抑えられている日本の長期金利の帰趨である。

 

日銀による政策変更はまだ見通せないが、どこかの時点でサプライズが起きる可能性は十分にある。市場はそれを予期して日本国債を売り始めるかもしれない。日本の長期金利急騰、債券暴落は2~3年の中期予想ではメインシナリオになっていくかもしれない。

最後に残った有望リスク資産、日本株式

焦眉の本邦機関投資家ポートフォリオ大改造、日本株にウェイトを

このように世界的金利上昇と債券のボラティリティの高まりを所与のものとすれば、外国債券にウェイトを置いてきた日本の銀行、生保、年金などの機関投資家のポートフォリオは大改築が必要になってくるのではないだろうか。

 

日本の銀行・機関投資家の資金運用はかつては国債投資主体であったが、2013~14年の日銀異次元の緩和、GPIFの運用改革以降、外国証券をリターン追及のためのリスク資産の中枢に据えてきた。

 

図表6はGPIFのポートフォリオ推移だが、アベノミクスの一環として始められたGPIF改革により、外国債券、外国株式、日本債券、日本株式各々1/4の構成にシフトしたことがわかる。

 

出所:GPIF、武者リサーチ
[図表6]GPIFのポートフォリオの大転換 出所:GPIF、武者リサーチ

 

改革直前の2012年度から2021年度までの10年間では総資産年平均6.6%の高リターンが実現し、収益累計は105兆円と、運用資産(197兆円)の過半を占めるという良好な成果がもたらされた。

 

資産クラスごとの収益率をみると、日本債券1.0%、外国債券5.6%、日本株式10.8%、外国株式15.4%となっており、2013~14年の改革が功を奏したことがわかる。

 

日銀の異次元の金融緩和QQEは、これらGPIF、ゆうちょ銀行をはじめとする日本の金融機関・機関投資家が保有していた国債を肩代わりし、それらのポートフォリオリバランスを可能にしたという点で、大きな役割を果たした。

 

出所:日本銀行、武者リサーチ
[図表7]日本国債の主体別保有比率 出所:日本銀行、武者リサーチ

 

しかしこれからも、外国債券、外国株式、日本債券、日本株式各々1/4の構成のままでよいとは限らない。そこには深い戦略的洞察が必要である。そもそも大幅な円安と為替変動、外国株式急落により外貨主体のリスクテイクの問題がにわかに強まっている。

 

外貨資産投資、日本債券投資はにわかにリスクが高まった。

 

以下3点はほぼ確かだろう。

 

Ⅰ. 外貨資産は、安定収益を狙うには為替変動があまりにも大きい、また為替ヘッジコストが恒常的に高くなり手が出せなくなっている

Ⅱ. 日本国内債券の金利リスクはYCCの出口が意識されるにつれ、いやがおうにも高くなる

Ⅲ. バリュエーションと収益モメンタムから見た国内株式の優位性が突出する

 

*為替ヘッジコスト(3ヵ月物)込み 出所:ブルームバーグ、武者リサーチ
[図表8]ドルヘッジコスト急上昇、米債投資妙味喪失 *為替ヘッジコスト(3ヵ月物)込み
出所:ブルームバーグ、武者リサーチ

 

銀行・機関投資家の間で資金運用対象の中心に日本株式を据えざるを得ない時代が来つつあるのではないだろうか。

 

銀行の場合資本規制、生保の場合ソルベンシーマージン規制があり、リスクウェイトの高い株式投資はしにくい状況もあるが、それでも戦略的対応の余地はあるだろう。

 

なお自国国債をリスクウェイトゼロとするバーゼル資本規制は、現実にそぐわず、修正されるべきではないだろうか。

 

 

武者 陵司

株式会社武者リサーチ

代表
 

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※本記事は、武者リサーチが2022年10月7日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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