(写真はイメージです/PIXTA)

9月のグローバルマーケットでは、米国の金利急騰により債券価格が下落、楽観論は崩れ、米国債をはじめ、債券に投資していた投資家は軒並み被害を受けました。そのようななか、株式会社武者リサーチの代表である武者陵司氏は、いまこそポートフォリオの主軸に「日本株式」を検討するタイミングだといいます。それはなぜか、みていきましょう。

米国国債の暴落で、機関投資家の外債投資損失が懸念

米国長期金利の急騰による損失は、日本の機関投資家においても発生していると推察される。米国長期国債価格は過去1年間で2割下落した。この損失は、過去1年間の2割以上の円安による為替益によってまるまるカバーされた。

 

しかし為替ヘッジをしていた投資家は、米国国債の暴落の直撃を受けることになった。図表3は元日経新聞編集委員、前田昌孝氏による週刊「マーケットエッセンシャル35号」に掲載されている野村NEXT FUNDS外国債券・FTSE世界国債インデックスETF(為替ヘッジあり、なし)のトータルリターン価格の推移である。

 

為替ヘッジありのETF価格は、昨年高値以降20%を超える下落となっている一方、為替ヘッジなしのETFは前年比ではプラスが維持されており極端な対比となっている。

 

出所:前田昌孝氏(元日本経済新聞編集委員)著の今週のマーケットエッセンシャル(9月28日公開)より、ブルームバーグを使用し武者リサーチ作成
[図表3]為替ヘッジ付き対ヘッジなしETF価格推移から見る外国国債投資の明暗 出所:前田昌孝氏(元日本経済新聞編集委員)著の今週のマーケットエッセンシャル(9月28日公開)より、ブルームバーグを使用し武者リサーチ作成

 

ここに来ての円急落、為替ヘッジコストの急上昇により、日本の銀行、生損保など機関投資家はヘッジ比率を引き下げていると推察されるものの、図表4に見るように、4割程度はヘッジされているのではないか。とすれば各社において相当の運用損失が発生している可能性がある。

 

出所:各社決算資料を集計したブルームバーグ記事より、武者リサーチ
[図表4]国内生保会社のドルヘッジ比率推移 出所:各社決算資料を集計したブルームバーグ記事より、武者リサーチ

 

図表5は第一生命一般勘定における2022年度の資産運用方針であるが、公社債48%、ヘッジ付き外債17%、貸付金7%、株式等15%、オープン外債5%、不動産その他8%となっており、外国債券の2/3が為替ヘッジがされている。ヘッジ外債は安全資産であるという思い込みが大きな見込み違いを引き起こした可能性がある。

 

出所:第一生命保険株式会社HPより
[図表5]第一生命2022年資産運用方針 出所:第一生命保険株式会社HPより

 

日本最大の外債プレーヤーはゆうちょ銀行で、郵便貯金で集めた資金を内外市場で運用している。

 

235兆円(22年6月末)の運用資産のうち141兆円が有価証券運用に振り向けられ、そのうち76兆円が外国証券(大半は債券)である。この外債投資が為替ヘッジ付きでなされているとすればそのダメージは無視できないだろう。

 

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※本記事は、武者リサーチが2022年10月7日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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