(※写真はイメージです/PIXTA)

青森県の石動総合会計法務事務所の代表を務める公認会計士が2020年の10月にラーメン屋「ドラゴンラーメン」を開業しました。公認会計士、税理士、司法書士、行政書士と複数の資格を持つ石堂龍氏が著書『会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる』(日本実業出版社)で解説します。

コストのかかるジャンルの方が集客はしやすい

ラーメン屋はライターや服屋と比べると、集客はとてもしやすいです。

 

熱狂的なマニアがたくさん存在しており、新店オープンを聞きつけると、続々と押し寄せます。

 

おいしければ口コミやインターネットで評判が広がり、それを見た一般のお客さんも来てくれるようになります。

 

もちろん、おいしくなかったり、高かったりしたら、いずれお客さんは来なくなりますので、評判が広がりやすいのは諸刃(もろは)の剣(つるぎ)ではあります。

 

昼時や夜に人の往来が多い立地に店があれば、通りかかった人が立ち寄ってくれることも多いでしょう。

 

出所:石動龍著『会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる』(日本実業出版社)より
ラーメン屋の「求心力」と「遠心力」の関係 出所:石動龍著『会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる』(日本実業出版社)より

 

かつて、アントニオ猪木は「環状線理論」を唱えました。要約すると、プロレス会場をいつも満員にするには、環状線の内側にいるプロレスファンだけでなく、外側にいる無関心な人を振り向かせる努力が必要である、という趣旨です。

 

そのためには、熱心なファンを引き付ける求心力と、一般の人にも知られるための遠心力が必要です。

 

ラーメンはこの2つの力を備えたジャンルです。いい店には、あっという間に行列ができます。メディアに取り上げられることも多いです。ドラゴンラーメンも開店から1年で、10回近くテレビや新聞、インターネットメディアに記事を掲載していただきました。

 

このように、商売によって集客のしやすさは異なります。

 

一般的に、コストがかかるジャンルのほうが、人目につきやすい傾向があります。

 

そして、儲かりやすさは売上、経費、リスクのバランスが大事です。ちょうどよい水準をキープできるよう、検討が必要ですね。

 

皆さんは、ラーメンを作ったことはありますか?

 

私は店を始める準備のために試作する前は、作ったことがありませんでした。やってみると意外にそれなりのものが作れるのでびっくりします。いい時代になったもので、インターネットでいろいろなレシピを調べられます。

 

ところで、漫画『美味(おい)しんぼ』に、カレーを食べた海原雄山(かいばらゆうざん)が「カレーとはなんだ?」と問いかけ、店主が言葉に詰まるというシーンがあります。

 

「ラーメンとはなんだ?」と聞かれると私も困ります。スープに麺が入っていればなんでもラーメンです。でも、「汁なし」もありますし、ときには「麺ぬき」もアリです。

 

だから、作った人が「これはラーメンです」と主張すればなんでもラーメンです。

ラーメン屋を開くには何が必要か

■まずは、調理器具、スープの値段は数千円から数万円まで

ラーメンは自由度が高いのが魅力なジャンルですけれども、ここではドラゴンラーメンの例に沿って考えてみます。どうやったら店でラーメンを出せるでしょう。

 

材料を揃えて、スープを煮込んで、麺をゆでるというプロセスはなんとなく想像できると思います。まず、スープは煮干、サバ節、鶏のモミジ(鶏足)などを煮込んで作ります。トッピングは豚バラ、鶏ムネ、卵、海苔など。醤油ダレはラード、鶏脂、魚粉などが入ります。あとは麺です。だいたい材料はこんな感じです。

 

「さぁラーメンを作ろう!」…と思ってもこれだけではできません。煮込む道具が必要だからです。ラーメン屋でスープ作りに使うのは寸胴(ずんどう)です。

 

ドラゴンラーメンでは3種類のベースになるスープを毎日作っています。それぞれ20リットルくらいの量を一度に作ります。寸胴はサイズによって値段が変わります。安いものは数千円、高いものは数万円になります。

 

これでようやくラーメンを作れるか、というとそうはいきません。まだまだ足りないものがあります。

 

火をつけるためのガスコンロ、材料を冷やしておく冷蔵庫も必要です。お玉や箸などの調理器具、食器も買わなくてはなりません。トッピングを作るために低温調理器、スープの加工にミキサーも使っています。

 

■店舗に機械に保険…初期費用は様々

これだけ揃えても、まだオープンはできないのです。そもそも店舗がありませんでした。ドラゴンラーメンは公共施設の一角を借りているので、敷金や保証金がかかりませんでした。一般的なテナントを借りる場合は、敷金や保証金などで、家賃の数ヵ月分をあらかじめ支払うことになります。営業許可を保健所で取得するのにも費用がかかります。

 

開店するエリアによっては、駐車場を別途準備することになります。八戸市は車移動が基本の地域なので、駐車場のない店にはお客さんが来ません。ドラゴンラーメンでは来客用の駐車場と、従業員用の駐車場を借りています。

 

また、お金のやり取りをするので、レジか券売機も用意します。そのほか、スープを取った後のガラや生ゴミは家庭ごみで出すことが禁止されているので、お金を払って回収を委託することになります。

 

保険も重要です。火事に備えて火災保険、食中毒を出してしまったときに備えて賠償責任保険は必須です。加入しないと、万が一の場合に人生が大きく狂ってしまいます。

 

■10席以上ある店ではワンオペは厳しい

これで必要なものは揃いました。さぁいよいよ開店…するにはまだ早いです。ワンオペで接客、仕込み、調理、片づけをやるなら大丈夫ですが、1人ですべて行うのは本当に大変です。

 

10席以上席数がある店ではかなり厳しいと思います。

 

そこで、従業員を雇うことになります。人を雇うと給与だけでなく労働保険料なども払うことになります。ドラゴンラーメンは1日3人のスタッフを雇っており、シフト管理のために有料ソフトを使っています。

 

ラーメンを店で出すにはこれだけの準備が必要です。材料だけ揃えてもオープンはできません。コストをすべて回収しないとお金が尽き、店が続けられなくなります。

 

ラーメン屋に限りませんが、商売を始めようとする場合には、しっかりプランを立て、実行していくことが求められます。そのために必要なのが「会計」の知識です。

 

石動 龍

石動総合会計法務事務所 代表

ドラゴンラーメン 店主

 

 

 

本書は石動龍氏の著書『会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる

会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる

石動 龍

日本実業出版社

◎ラーメン屋会計士が「儲けを生み出す会計」を伝授! 本書は、公認会計士・税理士として働く傍ら、2020年10月に地元青森県八戸市で「ドラゴンラーメン」を開業した著者による、ラーメン屋を題材にした会計の入門書です。 …

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