(※写真はイメージです/PIXTA)

「持ち家か、賃貸か」…ある意味古典的ともいえる論争のテーマですが、人それぞれの事情を考慮すれば、簡単に結論は出せません。しかし、近年の社会情勢や今後の展望を考えたとき、従来いわれてきた基準だけで判断するのは危険です。住宅ローンも家賃も、トータルすれば大変な金額ですから、失敗は回避したいもの。経済評論家で、高齢者の資産形成術にも明るい塚崎公義氏が解説します。

退職までに「住宅購入資金」を準備できればいいが…

退職後には自宅に住むとすると、現役時代から自宅を購入するか、退職時に自宅を購入するかのいずれかになります。

 

もっとも、退職金は老後資金の柱のひとつですから、退職金を全額投入して自宅を購入するというのは危険すぎます。

 

となると、現役時代には借家の家賃を払い、生活費を払い、自宅購入資金を貯める必要があるわけですね。これは、相当大変なことだといえるでしょう。普通のサラリーマンが頑張れば、不可能ではないのでしょうが、問題は頑張れるか否かですね。

 

人間は意思が弱いものです。ダイエットや禁煙に苦労する人が多いことを考えれば、納得できるでしょう。小学校の夏休み、最終日に泣きながら宿題をやった記憶がある人は、他人事ではありませんね。それと同じで、貯金も意志の強さを必要とするので、難しいのです。

 

つまり、退職時に住宅購入資金が貯まっていないリスクは決して小さくないわけで、そうしたリスクを避けるためには「現役時代に家を買ってしまうべきだ」ということですね。

 

ならば、若いときに住宅ローンを組んで自宅を購入してしまえばいいのです。銀行が強制的に毎月の返済額を取り立ててくれますから、意志が弱くても大丈夫です。自分で自分を我慢させることが難しいなら、銀行に頼めばいい、というわけですね。強制的に元利返済分を毎月引き落としてくれる銀行に感謝です(笑)。

震災で自宅が倒壊しても、敷地があればなんとかなる

自宅が地震で倒壊したらどうなるのか、と心配する人もいるでしょうが、逆の心配もあります。たとえば南海トラフ大地震で大都会が壊滅的な被害を受けたら、借家が倒壊し、代わりの借家を探しても見つからないでしょう。

 

そんなとき、自宅を持っていれば、建物は壊れても土地は残りますから、戦後のバラック住宅のようなものを建てればいいわけです。マンションでも土地は共有ですから、何とかなるでしょう。最低限住むところがあるか否かは大きな違いですから、これもリスク回避のひとつだと考えておきましょう。

独居老人に家を貸したがらない大家は多い

高齢者のひとり暮らしには家を貸したがらない大家も多いと聞きます。たしかに、借家人が孤独死をしていた場合を考えると、大家の気持ちもわかりますね。

 

いまの借家にずっと住んでいられるならばいいのでしょうが、なんらかの事情で住み続けられなくなったら、新しい借家に引っ越さなければならないのですが、その際に貸してくれる大家が見つからないケースもあり得るということは、リスクとして認識しておきたいものです。

家を借りるのも、貸家を経営するのも「リスク大」

筆者は「借家より自宅」という考え方ですが、「不動産を持つのはいいことだから、貸家も保有して賃貸経営しよう」などというつもりは毛頭ありません。貸家を持つことはリスクが大きいからです。

 

まず、自宅と貸家を持つと、財産全体に占める不動産の比率が大きくなりすぎます。分散投資の考え方からすると、不動産と株式等と預金等に資産は分散しておくほうが安全なのです。

 

人口減少社会ですから、貸家には空き家のリスクがあります。貸家にはトラブルメーカーが入居するリスクもあります。自宅には、空き家になるリスクもトラブルメーカーが住み着くリスクもありませんが、貸家にはありますから「自宅は持っても貸家は持たない」というわけですね。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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