要介護となった原因のNo.1は「認知症」
『令和3年版高齢社会白書』(厚生労働省)によると、介護保険制度における要介護者等645万3,000人となっている。ここ10年で175万6,000人増加したが、実にこれは第1号被保険者の18.3%を占めている。
要支援認定と要介護認定の割合は、65~74歳は、要支援認定が1.4%、要介護認定が2.9%。75歳以上は、要支援認定が8.8%、要介護認定が23.0%となっている。
上記から、後期高齢者になると要介護認定を受ける割合が急増していることがわかる。
では、要介護となった原因は何だろうか。総数で見ると、「認知症」が18.1%、「脳血管疾患(脳卒中)」が15.0%、「高齢による衰弱」が13.3%、「骨折・転倒」が13.0%となっている。
主要因は男女で違いがあり、男性は「脳血管疾患(脳卒中)」(24.5%)、女性は「認知症」(19.9%)となっている。かつては主要因の1位は「脳血管疾患(脳卒中など)」だったのだが、長寿化等の要因により、「認知症」の割合が増え続け、2013年近辺で逆転した。
要介護者は、一体だれが介護しているのか?
では、要介護者をだれが介護しているのだろうか。
下記の図表から見ると、同居の配偶者23.8%、子20.7%、子の配偶者7.5%であり、そのうちの35%が男性、65%が女性という構成だ。また、介護者の年齢は男性の72.4%、女性の73.8%が60歳以上で、いわゆる「老々介護」が多数を占めていることが見て取れる。
介護費用は「自身で賄う人」が圧倒的だが…
避けては通れないのが、介護費用の問題だ。2017年の内閣府による『高齢者の健康に関する調査』では、介護費用の出どころについて「年金等でまかなう」が63.7%、「貯蓄でまかなう」が20.5%、「収入や貯蓄ではまかなえないが、資産を売却するなどして自分でまかなう」が4.0%、「子などの家族・親戚からの経済的な援助を受けることになると思う」が3.2%となっている。自身の経済力だけでは介護負担は賄いきれないケースもある。
太陽生命少子高齢社会研究所『認知症介護に関する調査』では、認知症介護にかかる費用は平均258万円であり、最多は「50万円未満」で20.2%となっている。一方、「500万円以上」が18.5%、「100万〜150万円未満」が14.7%、「50万〜100万未満」が13.3%と続く。「2,000万円以上」も2%あった。
あるベテランの訪問看護師によると、費用の捻出ができないために、認知症が進行していても施設への入所ができず、家族が重度の認知症患者を抱え込んでいるケースも散見されるという。多くが「老々介護」状態であり、介護する側も非常に大変だが、要介護者も適切なケアが行き届かないという厳しい状況だ。
介護期間は平均4.9年で、「2年〜3年未満」が最多の15.8%。「3年〜4年未満」15.2%、「10年以上」14.7%、「1年~2年未満」12.1%となっている。
一方、介護離職者に限ると、平均6年で「10年以上」が22.6%となっている。介護期間の長期化によって、離職を余儀なくされていることが読み取れる。なお、厚生労働省の調査によると、毎年9〜10万人が介護を理由に退職している。
介護経験者の9割強は、「認知症の症状を理解しておくこと」「公的介護保険の仕組みや地域での支援サービスを理解しておくこと」が必要と回答している。経済的負担を軽減するためにも、「親を扶養に入れる」「障害者手帳の取得」など、高額介護サービス費制度や高額医療・高額介護合算療養費制度のほかの方法もきちんと知っておきたい。自身が介護を受ける側になることはもちろん、介護をする側になることも視野に、家族との腹を割った話し合い、そして何より資金面の準備をしておくことが大切だろう。
幻冬舎ゴールドオンライン編集部
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