税務調査で申告漏れや所得隠しが発覚するとどうなる?
税務調査による申告漏れや所得隠しのニュースは後を絶ちません。今年(2022年)も大阪で多額の申告漏れが指摘される事件がありました。
税務調査によって申告漏れが発覚した場合は、本来支払うべき税額に加え、ペナルティの税額を加えた追徴課税の支払いが求められます。追徴課税として加算される加算税にはいくつかの種類があり、どの加算税が課せられるかは申告漏れの内容によって異なります。所得隠しと判断された場合には、どのような追徴課税が課せられるのでしょうか。
今回は、大阪国税局による税務調査で申告漏れを指摘された例とその場合に課せられた加算税の内容についてご説明します。
【実例】税務調査で「4億円の申告漏れ」が発覚
2022年7月、大阪の老舗ゼネコンとして知られる会社が大阪国税局の税務調査によって、4億円もの申告漏れがあったと指摘を受けたニュースがありました。
この事件は、ゼネコンが下請け会社に工事の外注費として一旦支払ったお金を下請け会社からゼネコンの現場責任者である所長に複数回にわたって現金で払い戻されていたというものです。この払い戻しされた額に関しては、申告が行われておらず、大阪国税局はこの点を問題とし、意図的な所得隠しとして修正申告とともに1億円を超える追徴課税の支払いを求めました。
一方、ゼネコンに現金を払い戻していた下請け会社も、払い戻していた額を含めた6,700万円ほどの額を実際には支払っていない架空の外注費として計上していたため、こちらも税務調査で申告漏れとの指摘を受けています。
「追徴課税時に課される税金」はさまざまだが…
申告漏れとは、本来納めるべき税額が不足しているということです。追徴課税とは申告漏れを指摘され、修正申告を行った際に、本来納めるべき税額に対して不足している分の税金を支払うことを意味します。追徴課税がなされる際には、期限までに正しい税額を納めなかったことなどに対するペナルティとして加算される加算税や延滞税などの附帯税を加えて支払うようになります。
追徴課税時に加算される可能性のある附帯税には次のようなものがあります。
■無申告加算税
無申告加算税とは、期限までに確定申告を行わなかった場合に課せられる税金です。
無申告加算税は、原則として納める税額が50万円までは納付税額の15%、50万円を超えた場合部分については20%が加算されます。
■過少申告加算税
過少申告加算税は、期限内に確定申告を行ったものの、本来の税額よりも申告した税額が少なかった場合に課せられる税金です。過少申告加算税の税率は、追加で納めることとなった税額の10%です。しかし、追加で納付する税額が「当初申告した納税額」と「50万円」のどちらか多い方の金額を超えた場合、その超過部分には15%が加算されます。
■不納付加算税
不納付加算税は源泉徴収義務のある者が従業員の給与や賞与から徴収すべき源泉所得税を期限までに納付しなかった場合に課せられる税金です。不納付加算税の税率は、納付すべき税額の10%です。
■重加算税
重加算税は、加算税の中で最も重い税率が課せられるものです。重加算税の税率は、無申告加算税に代えて課せられる場合は納付税額の40%、過少申告加算税に代えて課せられる場合は追加で納付する税額の35%、不納付加算税に代えて課せられる場合は納付税額の35%が加算されます。
■延滞税
申告漏れによって加算税の納付が必要になった場合には、延滞税も併せて納付しなければなりません。延滞税は、期限までに納税しなかったことに対するペナルティとして課される税金です。延滞税は、納付期限の翌日から税金を完全に納付した日まで、日数に応じた額が加算されます。
「所得隠し」には、税率が最も重い「重加算税」を賦課
税務調査によって所得隠しと判断された場合は、最も重い加算税である重加算税が課せられます。重加算税が課せられるのは、納税者が帳簿の改ざんや偽装をしていたり、事実を隠蔽していたり、意図的に所得を隠したと判断された場合です。
重加算税は、期限後申告等があった日前5年以内に同じ税目に対して無申告加算税または重加算税が課されたことがあった場合は、課される税率がさらに重くなります。その場合、無申告加算税に代えて重加算税が課される場合は、税率が50%、過少申告加算税または不納付加算税に代えて課される場合は、税率が45%となります。
大阪国税局が今回摘発した事件では、意図的に行われた所得隠しであると判断されました。したがって、この事件では本来納めるべき税額に重加算税、延滞税を加え、1億円を超える追徴課税が行われています。
税務調査に不安がある場合は、税理士に相談を
税務調査は、納税の義務のある法人・個人であれば、どの会社であっても、誰であっても調査の対象となり得るものです。税務調査は税の公平性を維持するために、納税者が正しく納税しているかどうかを調査するものであって、ペナルティを課すことを目的とした調査ではありません。そのため、税務調査が入る前に申告内容の誤りに気付き、自主的に修正申告を行えば、加算税を軽減させることができます。
過少に税額を申告していた場合は、自主的な修正申告を行えば過少申告加算税は加算されません。また、確定申告自体を行っていなかった場合でも自主的に期限後申告を行えば、無申告加算税は5%に軽減され、不納付加算税も自主的な修正申告で5%に軽減されます。
もし、これまでに架空の外注費を計上していたり、売上を過少に申告していたりする場合、確定申告自体をしてこなかった場合などは、税務調査に入られる前に自主的に申告を行えば、加算税が軽減される可能性があります。税負担を軽減させるためにも、できるだけ早く税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
税務調査で申告漏れを指摘されると、本来の税額に加えてペナルティとして課せられる税額を含めた額を支払わなければならなくなります。帳簿を改ざんしたり、事実を隠蔽したり、意図的に所得隠しを行った場合には、最も重いペナルティである重加算税が加算されます。
もし、所得を正しく申告していない可能性がある場合、税務調査で申告漏れを指摘されれば追徴課税が行われる可能性があります。税務調査前に、自主的に修正申告を行えば過少申告加算税を支払う必要がなくなります。確定申告の内容に不安があるようでしたら、ぜひ早めに税理士にご相談ください。
税理士法人松本
\「税務調査」関連セミナー/
「相続税の税務調査」に 選ばれる人 選ばれない人
>>1月16日(木)開催・WEBセミナー