【新型コロナワクチン】5~11歳小児の副反応とは?“注意したほうがいい子”の特徴も(現場の医師が解説)

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小橋 友理江
医療ガバナンス研究所
【新型コロナワクチン】5~11歳小児の副反応とは?“注意したほうがいい子”の特徴も(現場の医師が解説)
(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナ第7波によるかつてない感染爆発を目の当たりにして、子どもへのワクチン接種の必要性を改めて考えさせられた保護者は多いでしょう。わが子にワクチン接種を受けさせるべきか否か。新型コロナの抗体検査およびワクチン接種に携わる現場の医師・小橋友理江氏が、福島県石川郡の小児新型コロナワクチン合同接種の結果を基に、判断材料となりうるデータを紹介します。

新型コロナワクチン接種、子どもに受けさせるべき?

新型コロナの第7波において、10歳未満子どもの感染の占める割合は約15%であり、子どもから親世代に広がる感染や、学習機会の損失も大きな問題となった。新型コロナのワクチンを子どもに受けさせるかどうかは努力義務であるものの、最終的な判断は各家庭に委ねられる。

 

判断の根拠となるような情報として、特に副反応の詳細な情報は重要だろう。医療法人誠励会、福島県石川郡内の町村、医師会などの連携のもと行われた小児合同ワクチン接種では、ワクチン接種から1週間後まで連日の副反応についての情報の詳細なフォローを行なっている。本稿ではその結果をお示ししたい。重症な副反応の報告はなかったものの、注意が必要な子どもの特徴も見えてきた。少しでも皆様の判断材料になれば幸いである。

 

お示しするのは、福島県石川郡の4町村(平田村、玉川村、石川町、古殿町)の住民で、かつ医療法人誠励会でワクチン接種をした5~11歳の小児421名の結果である。結果の詳細は、プレプリントの論文として、プレプリントサーバーに発表されているので、詳細についてはそちらを参照されたい(*)。

「接種部位の痛み」以外の副反応があったのは12%以下

図表1を見ていただきたい。

 

[図表1]1回目接種後と2回目接種後に副反応を経験された方の割合(%)

 

全体の70%程度の方が1回目接種後も2回目接種後も局所の副反応を経験した一方で、各々の全身副反応を経験された方は12%以下であった。副反応はほとんどの方において、接種から数日以内に改善した。副反応は接種翌日に一番多く見られた。男女別の副反応については、女性において頭痛やだるさ、発熱が多少多い傾向にあったものの、ほとんど差は認められなかった。同様に、体重(30kg以上と以下)ごとの副反応についても、ほとんど差は認められなかった。

「5~11歳」と「12~15歳」で副反応の頻度を比較

次に、図表2を見ていただきたい。

 

[図表2]副反応の出現頻度を、「1回目/2回目接種後(左)」と「2回目接種後の5~11歳/2回目接種後の12~15歳(右)」で比較

 

5~11歳における副反応の有無は、1回目接種後でも2回目接種後でも大きな差は認められなかった。また、2回目のワクチン接種後の5~11歳における副反応の頻度は、12~15歳と比較して低かった。この主要な原因としては、5~11歳のワクチンの有効成分量が、大人のワクチンと比較し3分の1であることが関係していると考えられる。

アレルギー持ちの約20%が「接種後に悪化した」と回答

また、本調査にご協力いただいた約半数の210名の方が何らかのアレルギー疾患をお持ちであった(多い順に、花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギー)。アレルギーの持病をお持ちの方における副反応の頻度は、お持ちでない方と比べ、ほとんど差は認められなかった。

 

一方で、アレルギー疾患をお持ちの方のうち約20%が、接種後1週間に渡り持病の悪化が認められた、と答えた。しかしながら集団接種の副反応の相談のためのコールセンターや誠励会や市町村には、重篤な症状の相談などは寄せられなかった。

 

持病をお持ちのお子様は、新型コロナウイルスにかかったときの重症化リスクなどの観点から、積極的なワクチン接種が勧められている。本調査における持病の悪化については、ワクチン接種のストレスの影響など、どのような要因が関連しているかは明らかではない。ただ、アレルギー疾患をお持ちのお子様が新型コロナのワクチン接種を受けるときは、持病が悪化したときの対応などを、主治医と相談してから接種に臨むと安心だろう。

最後に

以上が結果の概要になる。この調査には、本当に多くの地域の人が協力してくれた。参加してくれた皆様、誠励会、福島県石川郡の役場の皆様に心から感謝したい。また、私自身も、どのような調査票を作成したらよいかという計画から、現地の調整、ワクチン接種、論文作成の指導、個人への結果返却、メディアへの発表と、色々な方のサポートを受けながら、4月から短期間のうちに多岐に渡り経験させていただいた。

 

もう1人、このプロジェクトを支えてくれたのは、帝京大学医学部4年の吉田誠君である。ワクチン接種会場まではるばる足を運んでくれ、ワクチン接種会場で調査票の書き方を住民1人1人に丁寧に説明してくれた。また、論文の作成にも主体となって取り組んだ。大事な試験の前日であったにも関わらず、自らの意思で記者会見にも参加し、様々に手伝いをしてくれた。

 

吉田誠君は地域の中で仕事をすることの大切さを学んだ、といつも口にしてくれる。地域の中で課題が生まれ、地域の方に支えられ仕事が進み、住民の方や社会に結果や知見を直接お返するという一連のプロセスに参加してもらうことができたのは、一重に吉田誠君が地域の方や周りの人に感謝しながら、いつも謙虚に様々なことに取り組んだ結果だろう。この仕事に意義を感じてくれ、関われてよかったと言ってもらえると、こちらも嬉しい。一つの仕事が、地域の住民、医療機関や医療者、行政、大学や研究者、学生、メディア、多くの方々を巻き込んだ。関わってくれ、支えてくださった皆様に、心より感謝したい。

 

5~11歳小児における新型コロナワクチン接種後の全身の副反応は、大人に比べて起こる割合が少なかった。ほとんどの方において、数日以内に副反応が改善した。アレルギー疾患を持つお子様において、全身副反応の頻度は持たないお子様と大きな差はなかったものの、約20%のお子様に持病(アレルギー疾患)の悪化が認められた。

 

一般的に持病を持つお子様には新型コロナワクチンの接種が推奨されているものの、アレルギー疾患をお持ちのお子様が新型コロナのワクチン接種を受けるときは、持病が悪化した場合の対応などを主治医と相談してから接種に臨まれると安心だろう。これらの結果が少しでも皆様の新型コロナのワクチン接種に向けた判断の一助となれば幸いである。

 

(*)論文題目: Time course of adverse reactions after BNT162b2 vaccination in healthy and allergic disease individuals aged 5–11 years: an observational and historical cohort study(https://www.researchsquare.com/article/rs-1928575/v1?fbclid=IwAR1Z2YFGXnNLVFL15jiUM63_jWmvOq83-8jPgoj19uae6Dtnl-Ir1MEXofw)

 

 

小橋 友理江

ひらた中央病院 非常勤医師

福島県立医科大学放射線健康管理学講座博士課程

麻酔科医・内科医

 

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。