「TOEIC800点台のNさん」が選ばれる理由
相手の欲求が分かればスキルや知識を磨く必要がない、とお伝えしていますが、信じられないという方もいるでしょう。そういう方のために事例を1つご紹介します。
英語コーチのNさんの例です。先述の通り彼のTOEICの点数は800点台です。もし英語コーチの価値がTOEICの点数で決まるのであれば、Nさんは選ばれないでしょう。しかし、Nさんを選ぶ人もいます。100万円のコースを選ぶ人さえいます。
なぜ、Nさんが選ばれるかというと、英語の勉強のモチベーションを保たせるのがうまいからだそうです。サボれない環境を作り、上達を感じさせ、やさしい指導なので、やる気を保ったまま学べます。
正確に言うとNさんは英語を教えていません。学習方法やお薦めのテキストなどは教えるのですが、勉強はクライアント自身でやってもらいます。これなら、Nさん自身が英語そのものを指導する必要はありません。ですので、「自分で勉強したいけど、なかなかモチベーションが続かない」という人には、Nさんの英語コーチングがぴったりなのです。
このように、スキルが高くなくても、経験が浅くても、知識が少なくても、選んでくれる人がいます。誰もがすごい人に仕事をお願いしたいと思っているわけではないのです。価値があるかどうかはお客様によって変わりますし、その価値基準はお客様によってさまざまです。価値はテストの点数でも、経験年数でも、資格の数でも決まらないのです。
お金を出す人が必ず存在する
長い間、お金を生み出すサポートをしていて確信していることの1つは、「どんなものであっても、お金を出してくれる人は必ずいる」ということです。
例えば、あるビジネス交流会に行った時、とても暗い雰囲気の人がいました。頼りなげにボソボソと話すので、最初は「こんな暗い人に誰が仕事を頼むのだろうか?」と不思議に思っていました。しかし、話をしてみると彼はしっかりビジネスをしていて、それなりに成功していました。
彼はスピリチュアル要素の強いカウンセリングをしていて、お客様は深い悩みを持った人たちです。であれば、彼が明るい必要はありません。お客様にとっては、彼は「暗い」のではなく、「落ち着いていて話しやすい」のです。また、スピリチュアルなことを好む人
たちにとっては「神秘的」なのです。
つまり、どんなサービスであっても、それを好む人が必ず存在するのです。英語をネイティブから学びたい人もいれば、日本人講師のほうがいい人もいます。有名なコンサルタントより、身近な人に教わりたい人もいます。やさしいコーチから学びたい人もいれば、厳しく導いてくれる人を求めている人もいます。
20年修業した板前さんの作ったものより、見習いの人の作った料理のほうが好きだという人もいます。物静かな人には、そういう雰囲気が好きな人が現れます。他人に厳しく言ってしまう人には、厳しく言って欲しいタイプの人がやってきます。
どんな人でも、その人にぴったり合った相手がいるのです。ですので、自分よりすごい人を見てうらやむ必要はありません。
「あの人みたいに話がうまかったら」
「もっと明るい性格だったら」
「学歴があったら」
「実績があったら」
「資金が豊富だったら」
「ITに強かったら」
「人脈があったら」
「イケメンだったら」
と思う必要はないのです。
それよりも、相手が強く持っている欲求に目を向けましょう。どんな人なら、「お金を出しても欲しい!」と感じるのか? そこからスタートするのです。