(※写真はイメージです/PIXTA)

日本ではこれまで円安になると経済的メリットがあると説明されてきました。しかし、自国の経済構造が消費主導型にシフトすると状況が変わってきます。このところ日本人の生活が苦しくなっているのはなぜでしょうか。経済評論家の加谷珪一氏が著書『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)で解説します。

消費主導型経済では消費を拡大させる必要

■消費はどうすれば増えるのか?

 

消費主導で経済を成長させるためには、輸出で経済を回すという従来型の成長メカニズムから脱却する必要があります。輸出主導型経済における基本的な成長のメカニズムについて解説しましたが、少しおさらいしてみましょう。

 

輸出主導型経済において成長のカギを握るのは輸出産業による設備投資です。

 

輸出産業は海外需要に対応するため、工場など国内の設備投資(I)を増やします。企業が設備投資を強化するということは、資材などをたくさん購入することを意味しますから、設備投資が増えれば、国内企業の収益も拡大していきます。拡大した企業収益は最終的には賃金という形で国内労働者の所得を増やします。

 

多くの消費者は稼いだ金額の一定割合を消費に回すので、所得が増えた労働者はその分だけ消費(C)を増やします。消費が増えると、今度は国内の店舗などに対する設備投資(I)が増加し、それがさらに所得と消費を拡大させるという流れで経済が成長していきます。

 

これに対して消費主導型経済を実現するためには、輸出企業の設備投資に依存せずに経済を拡大する流れを確立しなければなりません。下の図は消費主導型経済における成長メカニズムを示したものです。消費主導型経済において成長のエンジンとなるのは、文字通り、個人消費の拡大です。

 

何らかの原因で消費が拡大すると、企業は売上高の増大に対応するため、店舗や物流施設などに追加投資を行います。こうした設備投資のお金は国内の事業者に対して支払われますから、そこで働く人たちの所得も増やす結果となります。設備投資の活発化で所得が増えた国民はさらに消費を増やしますから、これが次の設備投資の呼び水となり、経済が持続的に拡大していきます。

 

消費主導型経済では、何らかの理由で消費が増え(①)、企業は生産力を高めるために設備投資を強化(②)、この支出が国内の所得を増やし、さらに消費を拡大させる(③)という流れで経済が成長します。

 

ここで重要なのは、景気拡大の起点となっているのが輸出ではないという部分です。輸出主導型経済では、輸出の増加がすべての始まりでしたが、消費主導型経済では、消費の拡大そのものが、成長のトリガーとなります。

 

つまり消費主導型経済において成長を実現するには、消費を拡大させる必要があるのですが、この仕組みでは「消費を増やすためには消費を増やす必要がある」という、ニワトリとタマゴのような議論(いわゆる循環論法)にならざるを得ません。

 

消費主導型経済では、とにかく消費が増えないことには何も始まりませんし、日本はすでにこうした経済構造にシフトしています。ところが、消費を増やすきっかけをつかめないことから、長期にわたってゼロ成長が続いているのです。

 

出典)加谷珪一著『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)より。
出典)加谷珪一著『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)より。

 

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本連載は加谷珪一氏の著書『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

縮小ニッポンの再興戦略

縮小ニッポンの再興戦略

加谷 珪一

マガジンハウス新書

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