格安物件は崖地や窪地に立っていることが多い
▶ポイント④安全性
格安物件は、崖地や窪地に立っていることが珍しくありません。安全性に不安があるので、このような物件はゼロ円でもなるべく避けるようにしています。
●窪地
周辺に崖や大きな河川がないにもかかわらず、そのエリアだけが窪んでいることがあります。その場所を窪地と呼びます。見た目にはわからない場合でも、ハザードマップで確認できます。
窪地は、周辺よりも地面が低いので、集中豪雨や最近多く発生するゲリラ豪雨時に、浸水の可能性が非常に高くなります。また、日頃から水が溜まりやすいので、大きな地震が起きたときに地盤が緩んだりする可能性もあります。
●崖地
絶対に避けるべきなのは、崖地にある物件です。崖の上に住宅が立っている場合は、地震や台風などの災害時に、崖ごと住宅が崩れ落ちるリスクがあります。また、崖下にある場合は、崩れてきた崖によって被害を受けるかもしれません。
過去に地すべりで崖の上に立っていた家が、崩れ落ちたという事故もありました。崖地の場合、崩れたら命にかかわる大変な被害になります。
●擁壁 (ようへき)
擁壁は崖などが崩壊しないように造られる「壁状の構造物」で、コンクリートや石で造られた、石垣のような壁を指します。 高低差があるだけではなく、坂の多い土地、たとえば函館や横浜、神戸など、坂で有名なところに多く見られます。
擁壁ならすべてNGというわけではありません。現在のコンクリートの擁壁はかなり強固なのですが、昔の大きな玉形の石や、玉砂利を積んでコンクリートで固めた石垣のような擁壁は弱いので注意しましょう。もともと土が崩れないように補強しているため、 時間の経過とともに強度が落ちてくると崩れる場合があります。
新築当時の建築基準法では許可が下りていた擁壁が、現在の法律では許可が出ないこともあります。その場合、現在の建築基準に合うように擁壁を補強し直さなければならなくなり、高額な費用がかかるかもしれません。 また、擁壁の途中に地中の水を抜く水抜きパイプがないと傾きやすくなります。
擁壁の保守管理は所有者の責任であり、擁壁が崩れた場合の被害には保険が適用されないため、その点でもリスクが高いといえます。
擁壁に関する内容は、売買の重要事項説明書でも説明されます。その際に、説明や資料が不足していたら、潜在的なリスクが隠れているかもしれません。擁壁のある物件の購入時には、細かなチェックをすることが重要です。 より詳しく調べるには、役所に行けば図面などで調べられます。
▶ポイント⑤環境
物件のエリアの環境についても、購入前にチェックしましょう。まず確認するべきなのは、賃貸需要と気候についてです。
●賃貸需要
我々が扱うのは格安物件なので、どのくらい需要があるかは、家賃設定に大きく影響してきます。その地域の賃貸需要は、不動産ポータルサイト、SUUMOやアットホームなどで検索し、地域の家賃相場を調べるとわかります。
次に、対象地域の「生活保護住宅扶助」を調べます。これもネットで検索すると対象地域の生活保護の方に支給される、家賃扶助額の一覧が出てきます。この金額が、その地域の家賃下限の目安になりますので、私はよく事前に調べます。
●気候
次に、そのエリアの気候です。日本は、北は北海道から南は沖縄まで、かなり気候の幅がある国です。また、同じエリアでも、海辺なのか山あいなのか、平地なのか傾斜地なのかによっても気候は違ってきます。
最近、東北にある自治体にゼロ円の空き家について問い合わせたところ、「ここは豪雪地帯なので、雪がどのくらい積もるのか、ぜひ冬に見に来てください」と言われました。ゼロ円で譲る代わりに、豪雪地帯の冬をその目で確認してから決めてくれ、というわけです。
言われてみればもっともな話で、慣れていない土地の物件を購入する際には、やはりそのエリアの気候は体感しておいたほうがいいです。
自然災害でも、火災保険のオプションである程度カバーできるとはいえ、事前に物件のエリアの気候を知っておくことで、受けなくてもいい被害を避けることができます。前もって準備できることは、しておくに越したことはないのです。
解決できる問題と解決できない問題を見極めるのが最重要。労力やコストをいかにかけず貸し出せるかに注力する。
椙田 拓也
一般社団法人マネー総合研究所 代表理事
カネコ ツトム
中小企業診断士