血液検査で「尿素窒素が1ケタ」は典型的な低栄養
低栄養とは常識的には戦後の食糧不足や高齢者のサルコペニアをさすのだと思います。
しかし栄養療法の考え方で診ると、たとえばタンパク質の動きが落ちている人が普通に見つかります。
血液検査項目の中には、腎機能検査としてよく尿素窒素(BUNとかUNと書かれているかもしれません)というものを測ります。
これが高値なら血液中に尿素窒素という物質が増えているので、腎臓のフィルター機能が落ちているかも…という判断をします。基準値はだいたい8.0~22.0mg/dLと、かなり幅があります。
しかし栄養療法の考え方はこれに加え、生化学の教科書にある通り、本来尿素窒素とはどのように作られるのかを考慮します。
ちょっと難しくなりますが、たとえばエネルギーを作るためにXという物質からYという別な物質を作るとします。しかしその過程では有害なアンモニアが必ず発生します。このままでは危ないので、ただちに無毒なものに変換します。それが尿素窒素です。
尿素窒素は肝臓から血管を通って腎臓に達し、腎臓のフィルターで選別され、尿として排泄されます。
すると腎臓のフィルターが正常ならば、血液中の尿素窒素の値は、XからYが作られた量を反映します。
実はXとはグルタミン酸という物質で、タンパク質が何段階もの化学反応(代謝といいます)を経てできあがります。ですからXが低ければ尿素窒素も低く、全体としてタンパク質の代謝も落ちていると推察することができるのです。
Aさんの場合はこれが8.0mg/dLと、基準値の下限ギリギリでした。これは原材料であるタンパク質が不足しているか、あったとしてもビタミンやミネラルなどの不足でうまく代謝できていない、ということです。
栄養療法の観点からは、だいたい16.0mg/dLくらい欲しいところですので、Aさんはその半分しかなかったことになります。これは副腎疲労の一因として疑うのに十分です。
実は尿素窒素が1ケタというのは、特に若い女性に多く見られる典型的な低栄養の値です。それでも機械的にA判定となり、一般的には問題ないとされています。