長生きへの備えは難しい、「老後の短縮」を考えよう
公的年金で最低限の生活を営み、貯えた老後資金でささやかな贅沢を楽しむ、といった人が多いと思いますが、「長生きをしている間に貯えが底を突いてしまい、年金だけで暮らさざるを得なくなる」というリスクがあります。
長生きのリスクに備えるのは容易なことではありません。長生きしてもずっと払ってもらえる民間の保険はあるのですが、保険会社の「手数料」部分が比較的大きいので、これに頼るか否かは難しい判断でしょう。
筆者としては、元気な間は働いて稼ぐ、という選択肢がいいと思っています。長生きをする人は、元気で働ける期間も長いのが普通でしょうから、元気な間は働いて稼ぐことにすれば、老後資金面での「老後」を短縮することができますから。
預金はインフレに弱い「リスク資産」だと知っておこう
高齢者の多くは、老後資金を銀行預金で持っています。しかし、銀行預金はインフレが来たときに目減りしてしまうので、「リスク資産」だと筆者は考えています。
インフレなど来ないと思っていた人も多いかも知れませんが、実際に食料品等が値上がりしているのを見て、将来が不安になっている人も多いでしょう。
筆者としては、「少子高齢化で労働力不足となり、賃金が上がってインフレになるリスク」「南海トラフ大地震で巨額の復興需要が発生して超インフレになるリスク」を心配しています。老後資金はインフレに強い資産で持ちたい、と考えているわけです。
具体的には、米国株の投資信託の積立投資が初心者でも簡単にできるインフレ対策だと思います。詳しくは別の機会に詳述しますが、インフレが心配だという読者は、老後資金のほんの一部だけでも、米国株の投資信託に振り向けてみてはいかがでしょうか。
人生における、広義の「保険」を準備しておく
保険というのは、非常に困ったことが起きたときに最悪の事態を回避するためのものです。家が火事になって住むところがなくなっても、アパートを借りる資金等々はなんとかなる、というイメージですね。
その意味では、保険会社と契約をするものが多いのですが、それだけではありません。インフレが来たときに困らないように、老後資金の一部をインフレに強い資産で持っておく、というのも「保険」なのです。
長生きのリスクに備えるためには元気な間は働くというのも「保険」でしょう。働いていれば、インフレになった時にも収入が増えますから、貯えてあった老後資金が目減りしてしまっても、老後の稼ぎの分だけは目減りしないので、その点もメリットですね。
余談ですが、専業主婦にとっては、自分が働くことが「保険」になります。配偶者と死別したり、離婚したり、配偶者が失業したりするリスクを考えると、自分が働いて稼ぐことが単に収入を得るだけではなく、リスクへの備えとしても重要だということが理解できると思います。
本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義
経済評論家