「少子高齢化で年金が破綻する」というのは誤解だ
日本の年金制度は、現役世代が支払った保険料を高齢者に配るという仕組みになっています。これを「賦課方式」と呼びます。その特徴は、インフレに強い一方で、少子高齢化に弱いということが挙げられます。
インフレになると現役の給料が上がるので、保険料が増えて高齢者に支払う年金を増やすことができますが、少子高齢化になると少数の現役が支払った年金保険料を多くの高齢者で分け合うことになるので、1人当たりの年金額が減ってしまうわけです。
したがって、高齢者の年金額は、今後少しずつ減っていくと言われています。それを考えて、若いときから老後資金を貯めたり、65歳以降も働いて稼いだりすることが推奨されているわけです。
もっとも、「年金制度が破綻する」といった過度な懸念は不要です。厚生労働省が5年に一度発表している年金額の将来試算では、前提条件を若干厳しく見ても、高齢者の年金額はそれほど減らないとされています。
それでも前提が甘すぎると考えるとしても、せいぜい現在の高齢者の年金額より2割減る、といった程度ではないでしょうか。現役世代の人数がゼロになるわけではありませんし、国民年金の原資の半分は税金ですから、年金制度が破綻することはあり得ないと考えていいでしょう。
「年金が2000万円不足する」というのも誤解だ
数年前、年金だけでは老後資金が2000万円不足する、という報告書が話題になりました。不安に思った人も多いでしょう。
しかし、報告書をよく読むと、2000万円不足しているのではなく、高齢者は年金に加えて2000万円ほど老後資金を使っている、という内容となっているのです。つまり、2000万円足りないのではなく、平均2000万円ほどの老後資金を持っているので、それを使ってささやかな贅沢を楽しんでいる、という事なのです。
老後資金が2000万円より少ない人は多い人よりもささやかな贅沢の量が少ない、というだけのことであって、「足りないから生活できない」ということでは無いのです。
不安を煽る話が多いので要注意!
老後資金問題に限らず、世の中には不安を煽る話が多いので、要注意です。評論家たちは「心配です」という方が話を聞いてもらえるので、悲観的な話をしたがります。マスコミも、悲観的な話の方が視聴率等を稼ぎやすいので、悲観的な話をしたがります。
野党や一部マスコミは、政府批判をするために「困った状況だ。政府が悪い」と言いますが、聞いた方は自分の身に悪い事が起こりそうな気がして不安になりがちです。
老後資金に関して言えば、「老後資金が足りないなら投資で増やしましょう」と言って投資商品を売りつけようとする輩も少なくないようです。投資をすること自体は悪くありませんが、不安心理につけ込んで商品を売り込むような相手から冷静さを失った状態で投資商品を買うのは避けたいですね。
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塚崎 公義
経済評論家