(※写真はイメージです/PIXTA)

アメリカの18~29歳の男性の43%が暗号資産を利用したことがある、という調査結果が出ています。暗号資産に関して何かしら耳にしたことがあるという人は、アメリカの成人男性の8割を超えています。今まさに、1980~1990年代におとずれたインターネット黎明期のように、暗号資産とそれを下支えするブロックチェーンが黎明期を迎えています。Google Japanなどを経て、現在はプロ野球のパ・リーグをデジタル技術等で支援するパシフィックリーグマーケティング株式会社のテクノロジーアドバイザーを務める山本康正氏と、バークレイズ・キャピタル証券、Google Japanなどを経て、データサイエンティストとして活躍するジェリー・チー氏が、ソクラテス式対話のように問いと答えを繰り返しながら現代経済への認識を深めていく著書『お金の未来』(講談社現代新書)で解説しています。

ゲームと現実世界で、共通の暗号資産をもつメリット

山本 実生活だけではなく、ゲームの中でも暗号資産を使用することが増えていますよね。ゲーム内通貨やコインといったものはこれまでも存在していましたが、わざわざ暗号資産を使う理由はなんですか?

 

ジェリー 例えば、僕が前に所属していたゲーム会社スーパーセルの「クラッシュ・オブ・クラン」や「クラッシュ・ロワイヤル」では、エメラルドやゴールドという通貨が存在し、それらはゲームの中でしか使えなかったんです。

 

でも暗号資産をゲーム内で使うと、それはゲームがなくなった後も持ち出すことができるのです。本当の意味で所有することになります。

 

こうした思想は、イーサリアムブロックチェーンの共同創設者、ヴィタリック・ブテリンが、ブロックチェーンを作ったきっかけにつながってきます。

 

彼が「World of Warcraft」という有名なマルチプレイヤーオンラインゲームで遊んでいたときに、ゲーム開発会社の独断で好きなキャラクターの能力値が突然下がったそうなんです。その出来事があったので、価値が他人によって一方的に毀損(きそん)されることがないように、イーサリアムというプラットフォームを立ち上げたわけです。

 

中央集権化した体制では、特定のキャラクターが強すぎるから弱くするとかアイテムを削除するとか、ゲーム運営会社がなんでもやりたい放題できます。しかし、ゲーム内アイテムをブロックチェーン上で保存すればもう消すことはできませんし、ゲーム自体の運営が終わってもそのアイテムを保有し続けることができ、いずれは別の第三者のゲームで使うこともできるかもしれません。

 

また、暗号通貨をゲーム内通貨として使うことも考えられます。ただ、本当に計算単位が暗号通貨に取って代わるかというと、ボラティリティ(価格変動)が激しいこともあり、計算単位としては適していない場合もあります。

 

ステーブルコイン(安定した価格を実現するように設計された暗号通貨)などの安定した通貨もありますが、そのほとんどが米ドルや日本円に連動しているので、内実は米ドルや日本円を計算単位として使うのとそこまで変わらないということになりますね。

 

山本 ヴィタリック・ブテリンのエピソードからは中央集権型体制の課題が見えてきますね。「所有」するとはどういうことかを問い直すきっかけにもなります。それでも現実的には、法定通貨(日本円など)と暗号資産は長く共存していきそうですよね。

 

ジェリー そう思います。暗号資産のユースケース(利用者の要求や利用目的)が増え、利便性も高まり、普及し続けると思いますが、法規制で暗号資産が使えないケースもずっとあるでしょうし、既存の法定通貨を使うインフラや習慣がありますので、それが全てなくなるとは考えにくいです。

 

 

山本 康正

パシフィックリーグマーケティング株式会社 テクノロジーアドバイザー

 

ジェリー・チー

データサイエンティスト

 

本連載は、山本康正氏、ジェリー・チー氏の共著『お金の未来』(講談社現代新書)から一部を抜粋し、再構成したものです。

お金の未来

お金の未来

山本 康正 ジェリー・チー

講談社

いまお金とは何か? 暮らしや国家、銀行は一体どう変わるのか? 激変するお金と新しい世界――ビットコイン、ブロックチェーン、NFT、Web3…お金とテクノロジーのプロが語り尽くす〈一番わかりやすいお金の入門書〉 「…

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