(※写真はイメージです/PIXTA)

緑内障の進行には、食事や運動、生活態度が大きく関係しています。緑内障を悪化させないためには、何に気をつければよいのでしょうか? メディアでお馴染みの眼科専門医・平松類氏の著書『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)より、具体的な食べものや飲みものに関する注意点を見ていきましょう。

Q3. 緑内障に水分のとりすぎはよくないですか?

⇒A. 急激に水分をとると眼圧が上がります。ただし、コップ1杯程度であれば飲んでも問題ありません。

 

【エビデンスレベル:C】

急激に水分をとると、眼球の中の房水の量が増え眼圧が上がります。5分間で1Lの水を飲み、眼圧がどれぐらい上がるかを調べた研究では、「6~7mmHg程度眼圧が上がった*5」といわれています。しかも、その眼圧が上がる作用は1時間以上も持続します。また「水を飲むと眼圧が上がりやすい人は、視野も悪化しやすい*6」という研究もあります。とくに、女性や目薬を3剤以上(合剤は2剤と見なす)併用されている方は水を急激に飲むと眼圧が上がりやすくなるので注意してください。

 

こういった話をすると「眼圧が上がるのが怖い」といって水分をとらなくなる人がいますが、それは間違いです。水分が足りなくなると、血液の流れが悪くなり血管が詰まりやすくなるからです。脱水症状になれば体調も悪くなります。だからこそ、水分は少しずつとるのが正解です。

 

では、少しずつとはどの程度なのでしょうか? あくまで参考ですが、500mLのペットボトルであれば1~3時間かけて飲むとよいでしょう。コップ1杯の水なら普通に飲んで問題ありません。ただし、さらに飲むときは15分あけてから飲んでください。もちろん、脱水症状があるときや汗をたくさんかいた後などは急速に水分を補給せざるをえません。そういったときは身体の安全を重視してください。

 

また水分の摂取でとくに注意してほしいのが清涼飲料水を飲むことです。清涼飲料水には糖分が多くふくまれているので、血糖が上がり血管がダメージを受けます。やはり緑内障の場合は、水か無糖のお茶を飲むのがよいでしょう。

 

*5 Razeghinejad MR, et al. The Water-Drinking Test Revisited: An Analysis of Test Results in Subjects with Glaucoma. Semin Ophthalmol 2018;33(4):517-24. doi: 10.1080/08820538.2017.1324039. Epub 2017 May 24.

 

*6 Susanna R Jr, et al. The relation between intraocular pressure peak in the water drinking test and visual field progression in glaucoma. Br J Ophthalmol 2005;89(10):1298-301. doi: 10.1136/bjo.2005.070649.

Q4. 緑内障の人はコーヒー・お茶を飲んでもいい?

⇒A. コーヒーは1日3杯程度を目安に、お茶はカフェインがあまりふくまれていないものであれば問題ありません。

 

【エビデンスレベル:C】

「コーヒーは緑内障とあまり関係ない*7」というデータもあり、ダメというわけでもありません。その一方で、「緑内障のリスクが高まる*8」「眼圧が上がりやすい*9」というデータがいくつかあります。

 

では、コーヒーの何がよくないのでしょうか? それはカフェインです。カフェインは体内から水分を出してくれるので一時的に眼圧を下げる作用がありますが、多くの研究では長期的な眼圧は上がるのではないかといわれています。

 

そのメカニズムについては諸説ありますが、「平時の水分量に戻ろうとする作用で体内の水分量が一時的にオーバーになる」「カフェインの血管を広げる作用で視神経にダメージが加わる」などこれという説は定まっていません。だから、医師はよく「適量にしてください」といいます。なぜ適量かというと、実は医師も正確なことがいえないからです。しかし、それでは患者さんが困ってしまいます。一つの指標として私は「1日3杯程度」を推奨しています。これは「3杯以上コーヒーを飲むと緑内障のリスクが上がる*10」という研究を参考にしています。

 

この3杯というのは、普通のブラックコーヒーの場合です。砂糖を入れると血糖が上がるのでおすすめできませんが、牛乳などを少量加えるのは問題ありません。

 

お茶の場合は「飲んだほうがよいのでは?*7」というデータがあります。カフェインがあまりふくまれていないお茶であれば問題ないでしょう。緑茶にはカテキンやテアニンなどの目にやさしい成分もふくまれています。

 

カテキンには殺菌作用や老化を防ぐ抗酸化作用などがありますが、摂取しても吸収されにくいのが特徴です。一方、テアニンには睡眠を促したり、リラックスさせたりする作用があります。とくに、温かいお茶にはテアニンがふくまれているので1日1杯程度飲むとよいでしょう。

 

 

*7 Wu CM, et al. Frequency of a diagnosis of glaucoma in individuals who consume coffee, tea and/or soft drinks. Br J Ophthalmol 2018;102(8):1127-33. doi:10.1136/bjophthalmol-2017-310924. Epub 2017 Dec 14.

 

*8 Kang JH, et al. Caffeine consumption and the risk of primary open-angle glaucoma: a prospective cohort study. Invest Ophthalmol Vis Sci 2008;49(5):1924-31. doi: 10.1167/iovs.07-1425. Epub 2008 Feb 8.

 

*9 Chandrasekaran S, et al. Effects of caffeine on intraocular pressure: the Blue Mountains Eye Study.J Glaucoma 2005;14(6):504-7. doi: 10.1097/01.ijg.0000184832.08783.be.

 

*10 Pasquale LR, et al. The Relationship between caffeine and coffee consumption and exfoliation glaucoma or glaucoma suspect: a prospective study in two cohorts. Invest Ophthalmol Vis Sci 2012;53(10):6427-33.doi: 10.1167/iovs.12-10085.

 

 

平松 類

二本松眼科病院 副院長

 

※本連載は、平松類氏の著書『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識

自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識

平松 類

ライフサイエンス出版

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