自由診療とは?
■「全額自己負担」でも、将来大きな病気にかかるリスクを減らせる
自由診療とは、公的な医療保険制度が適用とならない全額自己負担の診療のことを指します。予防医療をはじめ、不妊治療(一部保険適用あり)、代替療法、美容整形、国内で未許可の医薬品を使用する場合、保険適用外の医薬品を用いる場合などに自由診療と判断されます。
歯科の場合は、歯列矯正やインプラント(一部保険適用あり)、ホワイトニング、予防歯科などが自由診療となります。また、保険診療と自由診療の併用は混合治療として原則禁止されており、どちらか一方しか選ぶことができません。
保険診療は「この病気ならこの治療法」といった決まりや制限がありますが、自由診療の場合は患者一人ひとりに合った、オーダーメイドの医療サービスが受けられます。保険制度の細かい規制や枠組みに左右されることなく対応できるので、健康意識の高い患者が受けています。
自由診療は全額自己負担であっても、予防治療ができることで、将来大きな病気にかかるリスクが少なくなります。健康で長生きするためにも、自由診療での予防治療を上手に活用していただきたいと考えています。
「先進医療」とは?
■「厚生労働大臣が定めた高度な医療技術」で、“まだ保険適用外”な治療
自由診療とも保険診療とも異なるものとして「先進医療」があります。
がん治療では重粒子線治療や陽子線治療が代表的な先進医療です。歯科でいうと、自分の血液を採取し、その血液を遠心分離にかけ、抜歯窩(ばっしか)などに血小板のかたまりを入れて骨を再生させるCGF(Concentrated Growth Factors)法などがあります。
先進医療の技術料は全額自己負担になりますが、それと同時に行われた診察や検査、投薬や入院にかかる費用には、医療保険が利用できます。ただし、先進医療を受けられる医療機関は、厚生労働省に届け出を済ませた特定の医療機関に限られます。
「保険診療」と「自由診療」のメリット・デメリット
■「自由診療=金儲け主義」という誤解もあるが…
国民皆保険制度による保険診療には予防治療が含まれないため、十分な予防治療を受けている人は少なく、日本では「予防弱者」が増えています。私は、決して保険診療が悪だとは考えていません。保険診療、自由診療ともにそれぞれメリット・デメリットがあり、それを理解して治療を受けることが重要です。
日本では、自由診療=金儲け主義、という誤解をしている方も少なくありません。
しかし、歯科では最低限の治療=保険診療、高水準の治療=自由診療という住み分けがあり、保険診療だけで患者が満足できる治療を行えるかは疑問です。
インプラントや矯正治療に保険がきかないのはご存知の方が多いと思います。自由診療は高度な材料を使うことが目的でなく、患者にとって最適な治療を選択するための診療です。保険診療とは異なり、治療方法や治療時間に制限はありません。よって、最先端の技術や材料を用いて、しっかりと治療することが可能となります。
私は、自分の歯を保存することがまずは重要だという考えから高度な治療を行っていますが、これは保険が適用できません。そして保険と自費を併用すると混合治療となり厚生労働省からペナルティが下されます。
「この歯を残すにはこの材料を使いたいな」と思っても、保険治療を希望されている場合はそこで制限されるため常に妥協案になってしまいます。保険適用範囲内での治療は不具合が起こりやすく、再治療になることも多くなります。結果、その繰り返しで歯を失うことにもなりかねません。
自由診療での治療では、患者の歯と健康のためにより良い治療を提供することができるので、これまで保険診療のみを行ってきた方には、選択肢を広げてもらいたいと思います。
保険診療が生む「病気になったら治せばいい」の意識
■歯科のほうが自由診療が多いが…
医科では、歯科に比べて保険診療でできることが多いという印象があります。この背景には、やはり歯科よりも医科が重視されており、保険診療でできることを医科で増やせるよう、厚生労働省が基準を変えていったことが関わっていると思います。
歯科でも、ハイブリッドセラミックの歯が保険適用になるといった変化はありますが、歯科よりも医科のほうが優遇されているという感覚は否めません。私は、歯科でも保険診療でできる範囲を広げるべきだと主張するつもりはありません。むしろ、日本の医療費の逼迫状況を考えると、医科も予防医療を重視して、自分でつくってしまった病気は自分のお金で治すという方向にシフトすべきではないかと考えます。
歯科でいえば、銀歯や白いレジンを保険治療で入れる必要はなく、生活習慣による虫歯の治療費は自分で負担するというシステムにすれば、もっと真剣に予防に取り組むようになり、歯科の医療費はぐっと下がるはずです。
医科歯科ともに自己責任の病気の治療費は自分で負担するようになれば、その分医療費以外の社会保障費に予算を割けるようになり、出産、育児、介護などを手厚くサポートできる体制になるはずなのです。また、患者が自分の体や病気を真剣に考えるようになれば、医師も薬を処方するだけではない治療法を真剣に考えるようになり、医療の発展にもつながっていくはずです。
金子 泰英
医療法人KANEKO DENTAL OFFICE 理事長・院長