アベノミクスの成果②…企業収益と税収の劇的改善
しかしより大きなアベノミクスの成果は企業の収益であろう。2000年から2010年そしてアベノミクスが始まる2012年まで40兆円台で推移していた法人企業の経常利益はアベノミクスが終わる2019年度に71兆円、2021年度には87兆円と倍増している。
また、政府の財政バランスも大きく改善した。プライマリー財政政バランスはアベノミクスが始まる直前-8.2%であったものが安倍政権が終わるときには-2.9%と約6ポイント上昇した。2度にわたる消費税増税と景気の拡大による所得税の増加が大きく寄与した。
注目すべきは税収の顕著な増加である。2012年度の日本の一般会計税収は44兆円であったが2019年度は58兆円、2022年度の予算では65兆円と、10年前比5割増となっている。
年金財政の顕著な改善、運用益20兆円から100兆円に
さらに年金財政が運用益の増大により大きく改善した。
公的年金基金(GPIF)の直近2021年度末の運用資産は197兆円、これに対して105兆円が累積運用収益である。2012年度末のGPIFの運用資産は120兆円、対する累積運用益は25兆円であった。
2013年以降アベノミクスによりGPIF改革がなされてから今日までの運用資産は77兆円増加、累積運用益は80兆円増加であったから、年金財政の改善はもっぱら運用益の増加であったことが瞭然である。
なぜこれほどの運用収益改善が可能になったかといえば、そのすべてはアベノミクスの成果といえる。
GPIFのポートフォリオを概観すると、2012年には62%と過半を占めていた国内債券が24%に引き下げられ、その部分を国内株式(15%→24%)、外国株式(12%→25%)、外国債券(10%→24%)にシフトさせた。
2012年度末から2021年度末への累積運用収益増加額80兆円の内訳は国内株式27兆円、外国株式41兆円、外国債券9兆円となっており、2013年のGPIF改革(基本ポートフォリオの見直し:国内債券を60%±8%から35%±10%へ)が決定的に影響していたことがわかる。
これと軌を一にし、日銀はGPIF、民間金融機関、郵貯の持っている国債を量的金融緩和によって大きく肩代わりした。日銀の国債保有比率は2012年末の11%から2020年末には48%へと上昇した。リターンを生まない、もしくは含み損になりかねない国債を日銀に肩代わりさせることで、GPIFや民間金融機関の資金運用が大きく自由化し、高い運用収益が可能になったのである。
このように株が上がって運用益が劇的に高まっても、富裕層が報われているだけで庶民は幸せになっていないと喧伝する向きが多いが、それもまったく的外れである。
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