●4-6月期は現在2ケタの増収増益、純利益では卸売業、陸運業、海運業のプラスの寄与度が大。
●企業の今年度業績予想は小幅に上方修正、ただ依然として控えめで市場予想には届いていない。
●決算はまずまずも、あく抜けには至らず、株高には米経済と金融政策に関する好材料が待たれる。
4-6月期は現在2ケタの増収増益、純利益では卸売業、陸運業、海運業のプラスの寄与度が大
足元では、3月期決算企業による2022年4-6月期の決算発表が続いています。8月2日時点で、東証株価指数(TOPIX)構成企業のうち、金融を除く473社(全体の約37%)が決算発表を終えました。2022年4-6月期の実績を確認すると、前年同期比で売上高は17.6%増、営業利益は5.3%増、経常利益は29.1%増、純利益は28.3%増で、増収増益となっています(図表1)。
製造業・非製造業の区分でみると、製造業は売上高と経常利益が増えたものの、増加率は1ケタにとどまり、営業利益と純利益は減益です。一方、非製造業は相対的に好調で、2ケタの増収増益となっています。純利益について、製造業では、電気機器や輸送用機器のマイナス寄与度が大きく、非製造業では、卸売業や陸運業、海運業のプラス寄与度が大きくなっています。
企業の今年度業績予想は小幅に上方修正、ただ依然として控えめで市場予想には届いていない
次に、企業による2022年度の業績予想について確認します。業績予想を公表している企業について、入手できるデータに基づき集計したところ、前年度比で売上高は9.6%増、営業利益は4.7%増、経常利益は1.5%減、純利益は1.8%減という見通しが示されました(図表2)。業績予想の改定率は、順に+0.4%、+0.1%、+1.7%、+2.1%で、小幅ながらも全体として上方修正の動きがみられます。
改定率は、製造業よりも非製造業の方が大きく、特に海運業や倉庫・運輸関連業の数字が相対的に好調です。なお、2022年度の業績予想について、市場の予想値と企業自身の予想値との乖離率をみると、売上高は-0.4%、営業利益は-7.0%、経常利益は-8.7%、純利益は-8.4%となっています。企業自身の業績予想は、依然として控えめで、市場の予想値に届いていない状況となっています。
決算はまずまずも、あく抜けには至らず、株高には米経済と金融政策に関する好材料が待たれる
次に、進捗率を確認します。進捗率とは業績予想に対する実績の進捗度合いを示すもので、一般に、売上高や純利益などの四半期累計値を、企業による通年度の業績予想で割って求めます。4-6月期の場合、進捗率は25%が目安となりますが、8月2日時点で、売上高は23.6%、営業利益は21.8%、経常利益は25.8%、純利益は28.3%でした。利益進捗率は、製造業よりも非製造業の方が大きくなっています(図表1)。
日経平均株価の動きをみると、決算発表が本格化する前の7月22日から8月2日までの期間、1.1%下落しています。国内企業の2022年4-6月期決算は、今のところまずまずの内容ですが、好決算銘柄を個別に物色する動きにとどまり、あく抜けには至っていない模様です。日本株は外部環境に左右されやすい状態が続いており、明確な株価上昇には、やはり米国でのインフレ沈静化、利上げペース鈍化、景気後退回避を確認する材料が待たれます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年4-6月期の「国内企業決算」の途中経過【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト